山田朗さん講演会情報

新宿の国立感染症研究所の敷地内(陸軍軍医学校跡地) から多数の人骨が発見されたことをきっかけに活動を始めた「軍医学校跡地で発見された人骨問題を究明する会」が「むさしの科学と戦争研究会」とともに主催する講演会の情報です。

 

『歴史評論』21年5月号

歴史評論』(歴史科学評議会)の2021年5月号が「ひとびとの歴史意識に向き合い、疑問に答える」と題する特集を組んでいます。歴史科学評議会はラムザイヤーの日本軍「慰安婦」問題否定論を批判した「新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明」を出した団体の一つです。特集のねらいはもちろん歴史修正主義批判です。

 しかし、意図的に歪曲された歴史像、学術的成果を無視して拡散されている情報も少なくありません。特にインターネットの普及で、近現代史をめぐるいくつかの論点については、その傾向が強くあらわれています。こうした状況は歴史学研究の担い手にとって放置できないのであり、書籍やマスメディアをつうじて研究成果にもとづいた歴史像を提供し、また、ひとびとの歴史に対する関心や疑問にこたえなければなりません。

http://www.maroon.dti.ne.jp/rekikakyo/

図書館を利用するのが困難な情勢ではありますが、ぜひご覧頂きたいと思います。南京事件については伊香俊哉氏が、またホロコースト否定論については武井彩佳氏が寄稿されています。

オンラインセミナー「ラムザイヤー教授の歴史修正主義を批判する」

産経新聞』が大喜びで紹介したマーク・ラムザイヤーの「太平洋戦争における性行為契約」。しかしこれが根拠のない主張や引用文献の恣意的な利用、先行研究の無視といった手続き上の問題点を多数抱えていると批判されていることは皆さんご存知のことでしょう。

いまのところ右派からのまとまった反論らしきものは「歴史認識問題研究会」のサイトに掲載された、西岡力による「慰安問題に関するラムザイヤー教授論文撤回を求める経済学者声明の事実関係の誤りについて」だけです。しかしタイトルを見ればわかるように、ラムザイヤーの主張を正面から擁護すると言うよりも「経済学者声明」への批判に重きが置かれています。「性奴隷」という擁護への反論は例によって「公娼制」を引き合いに出すもので、公娼制が当時においても「事実上の奴隷制度」と批判されていたことは相変わらず無視されています。

さて明日14日、Fight For Justice 主催のオンラインセミナー「ラムザイヤー教授の歴史修正主義を批判する」が開催されます。

fightforjustice.info

これに先立ってFight for Justice(日本軍「慰安婦」問題webサイト制作委員会)/歴史学研究会/歴史科学協議/歴史教育者協議会が緊急声明「新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する」を発しました。

fightforjustice.info

rekiken.jp

 

東京大空襲関連記事

2日ほど遅れてしまいましたが、東京大空襲に関連した新聞記事で目に止まったものを備忘も兼ねてご紹介いたします。

-朝日新聞DIGITAL 2021年2月23日 「(私の視点)空襲被害者への援護 国会は「受忍論」と決別を 中山武敏」(archive

東京大空襲訴訟原告の弁護団庁、中山弁護士の寄稿です。

「受忍論」は直接的には日本国民の戦争被害の救済を阻んで来たわけですが、わたしたちがこの論理を乗り越える政権を生み出せなかったことの影響はもっと広範囲に及んでいると思います。他国の戦争被害者からの補償要求に応えようとする意見が多数派にならないのも、東電のように市民に甚大な被害を与えた企業が不誠実な態度を取り続けることが可能なのも、新型コロナ対策で政府が責任感にかける振る舞いを続けることができるのも、わたしたちが受忍論を「受忍」してきてしまったからではないか……と思えるのです。

 

-東京新聞 2021年3月6日 「【動画】孤児たちの闘い~東京大空襲~ 戦争孤児と関係者の証言集

1945年の3月10日、東京の下町一帯を火の海にした東京大空襲。そこで両親ら肉親を失い戦争孤児となりながらも生き抜いてきた方々に、当時の苦労やつらい思い出、そして後世に伝えていくべき貴重な証言をうかがいました。(インタビューは2019年1~2月)

8人の方のインタビューが公開されています。

 

-東京新聞 2021年3月10日 「東京大空襲の証言ビデオ 20年以上放置 300人超の証言が封印の恐れ 都平和祈念館計画凍結で」archive

東京都が記録した東京大空襲など戦争体験の証言ビデオ300本以上が倉庫に放置され、活用されない状態が20年以上続いている。当初展示予定だった「都平和祈念館(仮称)」の建設計画は凍結。都は別の方法での公開には「本人同意が必要」とする一方、意向確認は進めていない。10日で大空襲から76年。証言者が高齢化する中、「無責任」と批判の声が上がる。(岡本太)

 祈念館計画が頓挫した経緯は簡単にしか書かれていませんが、想像がつくように右派の横やりによるものです。妨害の中心にいたのは古賀俊昭土屋敬之、そして田代博嗣という3人の都議。そう、七生養護学校性教育実践にクレームをつけバッシングをした極右トリオです。右翼というのはアジア太平洋戦争のロンダリングのためなら同胞の戦争被害の継承のための事業など、後ろ足で砂をかけて平気な連中である、ということがよくわかります。

『中国戦線、ある日本人兵士の日記』

-小林太郎笠原十九司、吉田裕編・解説)『中国戦線、ある日本人兵士の日記 1937年8月〜1939年8月 侵略と加害の日常』、新日本出版社、2021年2月

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2015年10月4日号の『しんぶん赤旗 日曜版』に「遺族が公開 虐殺生々しく 上等兵の日誌」と出して報じられた旧日本陸軍第16師団所属の兵士の日記が新日本出版社から刊行されました。笠原十九司氏による詳細な解説が付されており、日中戦争をミクロな視点とマクロな視点で学ぶことができます。さらに日記の主が撮影した写真やスケッチが収録されているのですが、編者の一人吉田裕氏による「あとがき」によれば「本人が撮影した多数の写真が残されていること、その写真がほぼ時系列に従って整理されている」という点で、数ある従軍日記の中でも「際立った特徴」を持つ、とされています。

内容については今後折に触れて紹介させていただくつもりでおります。

 

Fight for Justice緊急オンライン・セミナー

従来の歴史修正主義者の主張と比べて新味があるわけではなく、ただただ「ハーバード大教授」という肩書で右派の大きな期待を集めているラムザイヤーについて、Fight For Justice のオンライン・セミナーが開催されます。

fightforjustice.info