戦争責任

主語をあいまいにした読売新聞社説の欺瞞

昨日の判決についての産経新聞の報道については、すでに ni0615 さんが論評しておられます。ここでは本日づけの読売新聞の社説(魚拓)をとりあげてみようと思います。 判決は、旧日本軍が集団自決に「深く関与」していたと認定した上で原告の訴えを棄却した…

「沖縄-刻まれた記憶」(信濃毎日新聞)

「薔薇、または陽だまりの猫」さん経由で。 昨年の8月から9月にかけて信濃毎日新聞に連載された、フォトジャーナリスト山本宗輔氏による「沖縄—刻まれた記憶」のPDFが著者自身によって公開されています。 http://homepage2.nifty.com/munesuke/shinmai-okina…

「軍命令」をめぐって

沖縄戦における「集団自決」をめぐる教科書検定問題については、これまで福田内閣の姿勢を「融和的」と評してきたわけだが、結局のところ「直接的な軍の命令だったことを示す根拠は確認できない」(強調引用者)という姿勢は崩さなかったようだ。強調箇所は…

アメリカ平和研究所シンポほか

今年の3月30日にワシントンの平和研究所 United States Institution of Peace で開催されたシンポジウム、Confronting the Legacy of the Past: Promoting Justice and Reconciliation in East Asia(「過去の遺産との対面—東アジアの正義と和解の促進」)に…

鉄血勤皇隊——少年たちはなぜ「招集」されたのか

鉄血勤皇隊についてのこのエントリが林博史先生のお目にとまったらしく、メールにて情報と資料を提供していただきました。お礼申し上げるとともにここで紹介させていただきます。なお、引用文以外の文責、および引用のしかたに関する責任はもちろん私にあり…

長勇第32軍参謀長の談話

文部科学省お墨付きの『沖縄戦と民衆』(林博史、大月書店)より。 長参謀長は新聞紙上で次のように住民を煽った。 「ただ軍の指導を理窟なしに素直に受入れ全県民が兵隊になることだ。即ち一人一〇殺の闘魂をもって敵を撃破するのだ」、「従って戦場に不要…

「"tell"だから命令じゃない」論を駁す

最近しばしば見かけるのが、『沖縄タイムス』が報道した米文書には林博史氏の「恣意的な翻訳」がある、という主張です。問題の米文書についての林氏の解説についてはこちら。これに対する右派の攻撃については(とりあえず目についたところということで)こ…

文部省教科書調査官の証言

捨身成仁日記 「そもそも集団自決問題は軍による島民虐殺をごまかすためにお上が持ち出したものだろうに」 駄文 「集団自決があったことそのものが疑われるのではないか?という疑問」 上記2エントリのソースになっているのがこちら。「集団自決」について…

沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定をめぐって

多くの人々が亡くなったばかりの時点でこういうことを書くのはちょっと不謹慎のような気がして控えていたのだけれども、二つの出来事を対比してみる時どうしても頭を去らないことがある。ビルマ軍がデモ隊を武力鎮圧し日本人カメラマン長井健司さんが亡くな…

古森=池田連合

池田信夫 blog 国連という神話 ステージ風発 小沢一郎さん、国連軍を日本に常駐させたら、どうでしょうかーー実際にあった提案です*1 国連の安保理事会が、日本のアフガニスタンでの給油活動に「感謝」する変な決議をしたことで、問題はかえってこじれている…

空疎なレッテル、「反米」

今日も古森義久氏からお題をちょうだいします。「小沢一郎氏の恐るべき変節ぶりーーー米国との安保協力について小沢氏はかつて何を主張したか。」 なんというか、仮にも全国紙の論説委員がここまで底の浅い文章を書くというのはすごいですね。以下、具体的に…

朝日新聞「新聞と戦争」

朝日新聞夕刊で連載されている「新聞と戦争」、現在は「社論の転換」と題して朝日新聞が戦争協力へと傾斜していった経緯が描かれている。アジア・太平洋戦争における日本軍の行動を批判的に論評すると怒るくせに、なぜか朝日新聞の戦争責任を指摘することは…

『ゆきゆきて、神軍』(追記あり)

奥崎謙三宅が取り壊されたから…というわけでもないだろうが、『ゆきゆきて神軍』(監督:原一男、1987年、日本)のDVDが再発売された。 この映画が最初に話題になった当時にももちろんニューギニア戦線の悲惨さについて一通りのことは知っていたし、例えば人…

グアム戦犯裁判において裁かれた性暴力の事例

ハムニダ薫さんのエントリで、およびyamaki622さんのこのエントリでもとりあげられている事例、グアム島でアメリカの市民権を持つ現地の17才の女性を日本軍の将校が慰安婦としていた、というよりも端的に拉致監禁して常習的に強姦していたと言うべき事例で拉…

「誤解を与える発言」「気持ちを傷つける発言」(追記あり)

久間防衛相の原爆容認発言について安倍総理は、「誤解を与える発言」「気持ちを傷つける発言」という常套句によって幕引きをはかるつもりのようである。 しかし「誤解」だというのなら責任の一端は発言の聞き手(ないし発言を伝えたマスコミ)にもあるわけだ…

CIA、イラクの混乱を予測、と…

ワシントン・ポストの6月3日付けの記事、"Before War, CIA Warned of Negative Outcomes" によれば、CIAが2002年の8月に現在のイラクのアナーキーな状態、テロの横行、アメリカへの反感の強まり等を予測する機密報告書を出していた…ということなんだが、そん…

『NHKスペシャル 硫黄島玉砕戦 〜生還者61年目の証言〜』(DVD)

間違った戦略の下での正しい戦術、の意味を考えさせられる。「玉砕」を禁じられたことがどれほどの苦しみを強いたかはこのドキュメンタリーにも登場する生還者秋草鶴次氏の『十七歳の硫黄島』(文春新書)に詳しい。さらに、敗戦があと一ヶ月早ければ原爆投…

イラク駐留米軍兵士にモラル低下の傾向

Yomiuri Online 2007年5月5日21時37分 イラク米兵に深刻なモラル低下、戦争泥沼化でストレス? 【ワシントン=大塚隆一】米国防総省が4日発表したイラク駐留米兵の「戦場における倫理」の調査で、モラルや規律の低下が深刻な問題になっていることがわかった…

現役将校からの批判

asahi.com 2007年05月03日00時39分 米陸軍中佐、将軍非難の論文 イラク戦争遂行失敗で イラクへ2度の派遣経験があり、連隊副隊長を務める現役の米陸軍中佐が「米軍の将軍たちは、ベトナムと同様にイラクでも責任を果たさなかった」などと、戦争遂行策の失敗…

イスラエルにおける「開戦責任」論争

Yomiuri Online 2007年5月1日0時43分 レバノン紛争、イスラエル調査委「首相が重大な失敗」 【エルサレム=三井美奈】イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる昨年夏の戦闘を検証してきたイスラエル政府の調査委員会は4月30日、暫…

ドイツにおける「ナチ擁護」への反応

しんぶん赤旗 2007年4月15日 ナチ擁護 独首相が批判 “問題直視さけられない” 【ベルリン=中村美弥子】ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州のエッティンガー州首相(キリスト教民主同盟=CDU)が、第二次世界大戦中のヒトラー・ナチ政権下で海軍法…

Stars&Stripes紙、沖縄戦に関する教科書検定に言及

米軍兵士向けの日刊紙 Stars&Stripes は4月7日、"Okinawans outraged by what they say is a cover-up of military-urged mass suicides during WWII battle" と題する記事を掲載。 翌8日には "Survivors remember commotion then calm inside Okinawa cave"…

「新聞と戦争」(追記あり)

3月31日朝日新聞夕刊より。 かつて日本が満州事変から日中戦争、太平洋戦争の敗戦へと到った道の途中で、新聞はなぜ戦争を止められず、逆に戦争協力の深みに入っていったのか――。新たに掘り起こした事実や元記者らからの聴き取り、国内外の取材によって、多…

『日本帝国陸軍と精神障害兵士』

このエントリで言及した清水寛編著の『日本帝国陸軍と精神障害兵士』(不二出版)。目次を再掲しておく。 I 陸軍懲治隊と陸軍教化隊 第1章 陸軍懲治隊と徴兵制―近代初期における軍隊と障害者問題 第2章 陸軍教化隊と国家総力戦体制下の徴兵検査 II 日本帝国…

【速報】服部卓四郎ら、吉田茂暗殺・クーデターを計画!?

時事通信 2007/02/26-16:02 旧軍幹部らが吉田首相暗殺狙う=52年夏、クーデター企て−CIA文書 【ワシントン26日時事】1952年7月、当時の吉田茂首相に不満を募らせた旧日本軍幹部らのグループが一時、クーデターを計画していたことが、25日まで…

ディクシー・チックスのグラミー賞授賞式でのパフォーマンス

あのジョーン・バエズが紹介して登場。 Record of the Yearのプレゼンターはタランティーノとトニー・ベネットというわけの分からん組み合わせ。 ちなみに、 "Not Ready to Make Nice" のPVを観て私が連想したのは、ラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィ…

ディクシー・チックス、グラミー賞受賞

ブッシュを批判して、宗教右派に牛耳られているラジオ界から閉め出しを食ったディクシー・チックスがグラミー賞を受賞。 参考:http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20070211

元陸軍省軍事課予算班員が回想する関特演

昨日のエントリで言及した『陸軍の反省』(加登川幸太郎)の紹介。著者の元陸軍中佐は1940年に陸軍省軍務局軍事課資材班員となり、翌3月に予算班に異動。41年3月当時の陸軍大臣は東條英機、陸軍次官が阿南惟幾、軍務局長は武藤章、参謀総長は杉山元、参謀次…

秦郁彦、『現代史の争点』、文春文庫

この本は昨年買って南京事件に関する章だけ読み、エントリでとりあげようと思う論点がなかったのでそれっきりになっているのだが、とあるきっかけで目次を読み直してみて興味深い章を発見した。加登川幸太郎の『陸軍の反省(上)』(文京出版/建帛社)を古…

真珠湾攻撃については…

とりあえず現在、特に語りたいこともないので、以前に書いたエントリをリンクしておくことにする。『黒澤明vs.ハリウッド』、「外務官僚たちの真珠湾攻撃」