文献紹介

『戦場の軍法会議』

先日、旧陸軍の軍法会議の記録が新たに発見された、ということがNHKで報道されておりました。 NHK NEWS Web 2013年8月8日 「旧陸軍の軍法会議の記録発見」(魚拓) 焼かれるなどしてほとんど残されていないという戦時中の軍法会議の記録が見つかり、専門家は…

写真集『重重』刊行

昨年の6月26日は、新宿ニコンサロンにおいて写真家・安世鴻さんの写真展が開かれるはずでした。しかしご承知の通り、ニコン側からオファーがあったにもかかわらずニコンは開催中止を通告、その後東京地裁が安さんに対して施設(ニコンサロン)の使用を許諾す…

「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その12

吉見義明、「【資料紹介】第三五師団司令部「営外施設規定」」、『季刊 戦争責任研究』、第80号(2013年夏号)、pp.55-57 史料名でピンときた方もおられると思いますが、scopedog さんが発掘された史料が『季刊 戦争責任研究』の最新号に掲載されております…

『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」』

一ノ瀬俊也、『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』、文藝春秋 ジョン・ダワーの『容赦なき戦争』などが分析対象とした「戦争下の日米が相互に抱いたイメージとその作られ方」という問題に、「戦法(マニュアル)」という観点か…

『「村山・河野談話」見直しの錯誤』ほか

吉見義明さんの岩波新書、『従軍慰安婦』は刊行から20年近く経った今でも、この問題についての基本的な理解を形成するうえで有益な文献だとは思います。とはいっても、なにかあったらすぐこの本、というのではその後の約20年間に行なわれてきた調査、研究へ…

「東京裁判と特高警察」

荻野富士夫、「東京裁判と特高警察 不処罰の理由を追う」、『世界』(岩波書店)、2013年2月号 対日戦犯裁判では対独裁判に比べ「人道に対する罪」の追及が事実上なされなかったことは、当ブログの読者の方であればすでにご存知のことだろう。もし連合国が東…

『陰謀史観』

秦郁彦、『陰謀史観』、新潮新書 分析の対象となっているのは「明治維新に始まる近代日本の急速な発展ぶりが生みだした陰謀史観」(11ページ)なので、田中上奏文やバーガミニ(本書では「バーガミーニ」)の著作などにも言及があるが、意図してであれ結果と…

『朝鮮人強制連行』

外村大、『朝鮮人強制連行』、岩波新書(1358) 昨年の3月に出た本だが、遅ればせながら読了。 著者のことばでは「朝鮮人労務動員」に絞った研究であり軍事動員(「慰安婦」を含む)についてはほとんど触れていないが、他方で著者自身「日本という国家の抱え…

『記録 沖縄「集団自決」裁判』

岩波書店編、『記録 沖縄「集団自決」裁判』、岩波書店 今年2月刊。月刊誌『世界』に掲載されたものを含む論考、インタビューが第I部、被告弁護団による「裁判の経過・争点・判決・立証活動等」が第II部という構成。資料として陳述書や法廷証言(の要点)が…

『日中歴史認識』その後

服部龍二、『日中歴史認識 「田中上奏文」をめぐる相克 一九二七―二〇一〇』、東京大学出版会 先日読了。やはり「情報戦」という概念を軸として「田中上奏文」を考えようとするアプローチに違和感を覚える。曰く「「田中上奏文」に教訓があるとするなら、そ…

『日中歴史認識』途中報告

服部龍二、『日中歴史認識 「田中上奏文」をめぐる相克 一九二七―二〇一〇』、東京大学出版会 こちらのエントリのコメント欄で話題になった上記の本を図書館で借り、満洲事変〜国際連盟脱退までのところ(第2章まで)を読了。 「さかのぼり日本史」ともっと…

松木兼治郎の沖縄戦手記、復刊

今日は沖縄の「復帰」40年目の日にあたります。これを機に、阪神タイガース創設当時の選手である松木謙治郎の手記、『阪神タイガース 松木一等兵の沖縄捕虜記』が復刊されるそうです。 神戸新聞 2012/05/14 「沖縄本土復帰あす40年 トラ初代主将の戦記復刻…

『海軍反省会2』雑感

PHPからは今年の2月にすでに『[証言録]海軍反省会3』(戸高一成編)が出ているのだが、今回ようやく2を読んだ。 以前に1を読んだ時の感想にも似たようなことを書いたが、旧海軍についての私程度の知識では「読んで勉強になる」というところまでいかない。…

『 南京大虐殺否定論 13のウソ』、新装版

1999年に柏書房から刊行された『 南京大虐殺否定論 13のウソ』(南京事件調査研究会編著)が、先日 "KASHIWA CLASSICS" の一冊として再発売になりました。 http://www.kashiwashobo.co.jp/cgi-bin/bookisbn.cgi?isbn=978-4-7601-4094-7 定価が上がってしまっ…

あいかわらず『WiLL』がひどい

『WiLL』がひどい、というのはおよそニュースバリューのない事実なので最近はろくにチェックもしていませんでしたが、たまたま3月号の表紙をみたら相変わらずでした。 http://web-wac.co.jp/magazine/will/201203_w 目次をみて気づいたのですが、2月号から「…

「初めて人を殺す」

大島軍曹は即座に上官の「鶴の一声」に従い、 「では、列の最後尾にいる者から順番に刺突することにする。最後尾にいる者は前へ出ろ」 と怒鳴った。しかし、誰も前に出る者はいない。私たちの間にざわめきが起こった。列にビリにいるのは馬場二等兵にきまっ…

『ザ・パシフィック』

スティーヴン・スピルバーグやトム・ハンクスらが製作総指揮にあたった2010年のテレビシリーズ、『ザ・パシフィック』全10エピソードのうち、三が日で第8話まで観た。戦局で言えばガダルカナルから硫黄島まで。 このシリーズで描かれる戦場のうちペリリュー…

デマ注意報

先日、アパグループ第4回「真の近現代史観」懸賞論文の受賞作決定をとりあげた際、「優秀賞」受賞作の「日本は負けてない」(サー中松義郎博士)が“昭和天皇が原爆開発を止めさせた”というネタを含んでいることをご紹介しました。 原爆研究については陸軍が…

『日本軍「慰安婦」制度とは何か』ほか

昨月末のエントリでご報告したやり取りをしている最中などに、“もし一冊を推薦せよと言われたら?”てなことを考えていました。ご承知の通り「慰安婦」問題については吉見義明氏の『従軍慰安婦』(岩波新書)が超定番になっていますが、この本は1995年刊です…

『日本海軍400時間の証言』

NHKスペシャル取材班、『日本海軍400時間の証言 軍令部・参謀たちが語った敗戦』、新潮社 関連エントリ: http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090809/p2 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20100829/p1 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20100906/p1 09年に放送されたN…

細菌戦の報告書、発見

中国戦線での細菌兵器の使用について報告した文書が新たに発見された、との報道が週末にありました。 asahi.com 2011年10月15日 「旧日本軍、中国で細菌戦 陸軍の極秘公的文書に記述」(魚拓) asahi.com 2011年10月15日 「「政府は細菌戦の資料公開を」中国…

『複合戦争と総力戦の断層』

山室信一、『複合戦争と総力戦の断層 日本にとっての第一次世界大戦』、人文書院(「レクチャー 第一次世界大戦を考える」) 『カブラの冬』に続いて読んだ「レクチャー 第一次世界大戦を考える」の一冊。本書を特徴づけているのは日本にとっての第一次世界…

「再会の海」

6月6日から9日までの朝日新聞夕刊に、「再会の海 沖縄に眠る米艦エモンズ」と題する4回の連載が掲載されていました。沖縄戦の際特攻機の攻撃を受けて沈没したエモンズの生存者と遺族、元海兵隊員で現在は沖縄で漁師をしつつエモンズの「墓守」役を務めている…

放送予定

6月19日(日) 午後9時00分〜9時49分 NHK総合 NHKスペシャル「沖縄戦をたどる〜(仮)」 近現代史の戦争の中で、もっとも凄惨な戦いとされる沖縄戦。日本側の死者は18万人以上、米軍側の死者も1万人を超える。 ピュリツァー賞作家、デール・マハリッジは海…

『カブラの冬』

藤原辰史、『カブラの冬 第一次世界大戦期ドイツの飢餓と民衆』、人文書院(「レクチャー 第一次世界大戦を考える」) 昨年から刊行されはじめた人文書院の「レクチャー 第一次世界大戦を考える」シリーズ、どういうわけか地元の大型書店では現物を拝むこと…

『満州事変と政党政治』

NHKは今年4回シリーズで「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」を制作、放映したわけだが、そうなると気になるのはもう一つの問題である「日本人はなぜもっと早く戦争を終わらせなかったのか」をとりあげたシリーズが制作されるのかどうか。やるとしても4年後…

『外務省革新派』

戸部良一、『外務省革新派−−世界新秩序の幻影』、中公新書 27日にはNHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」の第3回が放映されるが、このシリーズの第1回「孤立を招いた“外交敗戦”」が放映された前後に読んだ本。「孤立を招いた“外交敗戦”」の主…

『東京裁判における通訳』ほか

武田珂代子、『東京裁判における通訳』、みすず書房 出た時から気になっていた本だが、ようやく読んだ。カバーのキャッチ・コピーより。 本書では、東京裁判の通訳について誤解を正す意味で、いったい誰がどのように通訳業務を遂行したかについて、さまざま…

「レクチャー 第一次世界大戦を考える」シリーズ新刊

昨年2冊が刊行された人文書院の「レクチャー 第一次世界大戦を考える」の新刊2冊がまもなく刊行されるようです。 山室信一、『複合戦争と総力戦の断層 日本にとっての第一次世界大戦』 藤原辰史、『カブラの冬 第一次世界大戦期ドイツの飢饉と民衆』 当ブロ…

『倉富勇三郎日記』刊行開始

以前にちらっとだけ言及したことがある、倉富勇三郎(朝鮮総督府司法部長官、法制局長官、宮内省御用掛、枢密院副議長・議長などを歴任したエリート官僚)の日記が国書刊行会から刊行され先月第1巻の配本が始まったことを昨日の新聞広告で知る。全9巻、年1冊…