日中戦争

「戦争の日本史」シリーズ

16日のエントリのコメント欄でも話題になった、吉川弘文館の「戦争の日本史」シリーズ全23巻のうち、22巻『満州事変から日中全面戦争へ』(伊香俊哉)、第23巻『アジア・太平洋戦争』(吉田裕・森茂樹)が日中戦争を扱っています。それぞれの目次は以下の通…

『満州事変から日中戦争へ』

岩波新書の「シリーズ日本近現代史』の第5巻、加藤陽子氏による『満州事変から日中戦争へ』。ちょっと前に読み終わっていたのだがとりあげそびれていて、なんというか間が悪くなってしまったのでごく簡単に。帯に「満蒙権益とは何だったのか」とあるように、…

『第11軍通信隊』

古書店で見つけた従軍記。著者は元陸軍大尉の久保村正治氏、タイトルが示す通り、高等工業高校を卒業して入営、甲幹として陸軍通信学校を卒業、野戦電信第9中隊の将校として一号作戦他に参加した経歴の持ち主。戦争の裏方である通信部隊の従軍記だが、目次を…

『日中戦争から世界戦争へ』

予告の実行か…というと違います。 このブログ(のコメント欄)でも度々言及されている永井和教授*1の『日中戦争から世界戦争へ』(思文閣出版)には「日中戦争と陸軍慰安所の創設」という章があるのだが(第五章)、ここでとりあげるのは第一章「日本陸軍の…

今月の雑誌より

実は私はいわゆる論壇誌というやつを含めて雑誌をあまり読まない単行本趣味なのだが、今日は珍しく3冊まとめ買い。 『世界』8月号はさすがに「盧溝橋事件70年――日中戦争の記憶とどう向き合うか」という特集を組んでいる。掲載されている関連記事は以下の通り…

『歴戦1万5000キロ』

藤崎武男、『歴戦1万5000キロ 大陸縦断一号作戦従軍記』、中公文庫 古書店で手に入れたものだが、文庫化が2002年、親本の刊行が96年なのでそう古い本ではない。著者は歴史家の藤原彰と同じ陸士55期、敗戦時の階級も大尉で同じである。藤原彰の『中国戦線従軍…

1937年7月7日…

今日は盧溝橋事件から70年という日にあたる(ただし、支那駐屯軍歩兵第一連隊の牟田口連隊長が攻撃を命令したのはすでに8日になってから)わけだが、新聞のテレビ欄をみる限り特にこの事件を特集した番組などは予定されていないようだ。 現代史家は盧溝橋事…

『第百一師団長日誌』

tomojiroさんからのご教示で『第百一師団長日誌 伊東政喜中将の日中戦争』(古川隆久ほか編、中央公論新社)が出版されていることを知り、購入。 手にとって最初に感慨を覚えたのは、三人の編者がみな1962年生まれということ。この種の仕事でも戦後派が中心…

予告

荒井とみよ、『中国戦線はどう描かれたか 従軍記を読む』、岩波書店 笹川裕史・奥村哲、『銃後の中国社会 日中戦争家の総動員と農村』、岩波書店 昨日の夕刊の広告で見かけて本屋に出かけたのだが見つからない。「5月の新刊」なのに腑に落ちん…と思っていた…

『日本の戦歴』、『未公開写真に見る日中戦争』

『日本の戦歴』、毎日新聞社、1970年 『別冊歴史読本 特別増刊 未公開写真に見る日中戦争』、1989年 残虐な画像を含むのでサムネイルをクリックする際にはご注意をば。 すべての写真について、モザイク又は黒線での目隠しは引用者によるもの。また、引用を最…

元侍従の日記発見

昭和天皇の戦時の肉声、元侍従の日記見つかる asahi.com 2007年03月09日03時01分 太平洋戦争開戦前夜から敗戦まで昭和天皇の侍従として仕えた故小倉庫次(くらじ)・元東京都立大学法経学部長の日記がこのほど見つかった。「支那事変はやり度(た)くなかつ…

『戦史叢書』にみる(?)「陽高事件」

防衛庁戦史室の編纂になる『戦史叢書 支那事変陸軍作戦』は312ページ以降の「察哈爾作戦 その二」において、陽高事件が起きた37年9月8日夜から翌9日にかけての関東軍(察哈爾兵団)の動きに触れている。 八日、軍司令官は鎮宏堡―聚落堡〔陽高の西方、引用者…

『日本の戦歴』

古本屋での収穫。毎日新聞社刊の『日本の戦歴』。1967年第1刷で私が入手したのは70年の第7刷、定価960円。帯の文句は次の通り(句読点、引用符は当ブログの慣用にあわせて変更)。 敗戦25年目に見直す真実の戦争記録!! 毎日新聞社が、軍部の焼却命令に抗し …

あえてそのたとえにのっかるなら…

すげえくだらないたとえなんだけど。 要するに整理すると、あなたは『事実』という関東軍の資料を『おまんじゅう』にたとえるなら、『おまんじゅう』をそのまま『おまんじゅう』と食べるのではなく、関東軍は悪逆非道であったというもともとのあなた達の歴史…

なに一つ「事実」を提示せずに「事実について語れ」と主張するひと

「関東軍」といえば記憶に新しいのが、自民党の中川秀直幹事長が自身の公式サイトで「日銀が「平成の関東軍」などといわれることのないことを期待する」と題する一文を発表したというはなしで、まあそれくらい「関東軍=独りよがりな暴走で国家に重大な危機…

「関東軍が未払い明文化」報道について

このエントリの続き。朝日の報道への反応(例えばこことかこことかこことか)を見ていると「そういえば朝日の報道も、事情を知らない人にとっては不親切といえば不親切かも」とも思ったので、昨日のエントリへの追記部分を敷衍しておく。 まず1月8日の朝日の…

北博昭『日中開戦―軍法務局文書から見た挙国一致体制への道』、中公新書

旧陸軍が「空襲軍律」を制定した経緯について紹介しておられるbat99さんのエントリで言及されている、『軍律法廷―戦時下の知られざる「裁判」』(朝日選書)の著者、北博昭氏の日中戦争論。副題が示すように、『支那事変海軍司法法規』という海軍法務部の内…

チャップリン『独裁者』、変更されたエンディング

13日放送のNHK総合「プレミアム10」、「喜劇王チャップリン・世紀を超える」によれば、『独裁者』の台本にラストの演説シーンはなかった。代わりに、武器を捨てた兵士たちが楽しげに踊るラストシーンが構想されていたとのこと。ちなみにその台本では日中戦争…

リアルタイムの視点

「後智慧ではなんとでも言える」とか「いまの価値観で過去を裁くな」というのは一般論としては一理あるわけだけれども、十五年戦争に関してこの手の論法が持ち出されるときにうさんくささを感じてしまうのは、「当時の指導者にとってアクセス可能であった情…

ネトウヨの言う通りなら日本人は皆殺し

藤原彰が『天皇の軍隊と日中戦争』で紹介している三光作戦(燼滅掃討作戦)関連の資料、北支那方面軍の「第一期晋中作戦復行実施要領」は「燼滅目標及方法」を次のように定めている。 1、敵及土民を仮装する敵→殺戮 2、敵性ありと認むる住民中十六才以上六…

一兵士が写した戦場の記録

dempaxさんからご教示いただいた、『新版 私の従軍中国戦線 村瀬守保写真集 <一兵士が写した戦場の記録>』(機関紙出版)を購入しました。村瀬氏は従軍カメラマンではなく、趣味のカメラをもって出征し中隊の記念写真を撮っているうちに、半ば公認の「中隊…

のど元過ぎれば熱さ忘れる…

asahi.com 2006年09月12日00時26分 (…)また、72年の日中国交正常化の際、中国が戦争指導者と一般国民を分けて自国民を説得したことについて「それは中国側の理解かもしれないが、日本側はみんなが理解しているということではない」と述べ、容認しない考…

「純粋に質問」とのことなので…

こちらも「純粋に回答」することにする。 純粋に質問なんですが、「侵略/被侵略」というのと「便衣兵の取り扱い」は切り分けて考えるべきではないのですか? (http://d.hatena.ne.jp/myhoney0079/20060905/p6) この「質問」の背景は青狐さんのこのエントリ…

笠原十九司、『日中全面戦争と海軍 パナイ号事件の真相』、青木書店

右派左派をとわず一定の認知を得ているのが「陸軍悪玉、海軍善玉」史観であって、これは東京裁判におけるA級戦犯に占める陸軍軍人の比率を考えれば直ちに了解できるように、実は「東京裁判史観」でもある。これに対しては旧陸軍関係者の中にも腹に据えかねる…

「祖父の戦場を知る」続報

反米嫌日戦線「狼」さん経由。ETV特集のベースになった新風書房の企画『孫たちへの証言』の映像版がネット上で閲覧できます。こちらの「7ch」です。

笠原十九司、『南京事件と三光作戦 未来に生かす戦争の記憶』、大月書店

先日とりあげた『南京事件をどうみるか』が1998年刊、本書が1999年刊とほぼ同時期の文献。こちらでも1997年のプリンストン大でのシンポジウムがとりあげられているので、内容的に重複するところもある。 第一部「逸したアジアとの「和解」」は1995年の「不戦…

8月13日放送、NHKスペシャル、「日中戦争〜なぜ戦争は拡大したのか〜」

オープニングは盧溝橋。盧溝橋事件の日に遠足で盧溝橋を見学する中国の生徒たち。盧溝橋事件以前の、それこそ満州事変〜満州国建国をオミットするのは妥当か…という問題はあるが、いずれどこかで区切らねば放映可能な番組にはならないわけで、日中戦争の長期…

『中国行軍 徒歩6500キロ』*2

旧軍兵士や将校が書いた戦記、回想録というのは読み物としてはともかく、史料としては専門家のフィルターを通さないかぎり、素人には扱いにくいものである。意図的な嘘や隠蔽がないとしても記憶違い・勘違いといったことはあり得るからだ。古本屋で見つけた…

吉林省公文書館で満州国関連文書発見

3月30日、朝日新聞朝刊、3、20、21面 関東軍が満州中央銀行の行員を対象に、満州事変への貢献度を調査させた報告書が見つかったというのも興味深いが、個人的には開拓団のトラブル、不満に関する記録が興味深かった。 「憲兵隊が記録した開拓団関係者の不平…