100年以上続く“反露”行事

 大社によると、大祭は、1905年に沖ノ島沖であった日本海海戦の勝利を記念して始まった。戦前は本土の大社で実施され、58年から海戦のあった5月27日に沖ノ島で催す現在の形になった。一般の上陸は原則禁止だが、大祭のみ全国公募の男性約200人が上陸している。

中国の抗日戦戦勝記念行事や世界各地の日本軍「慰安婦」追悼碑についてこの国のメディアが吹聴してきたことに照らすなら、日本では100年以上も前の出来事をネタにして反露活動を続けている、ということになりますね。
シベリア抑留関連資料の「世界の記憶」登録といい、ほんとうに自らのダブスタに無自覚な社会です。

千葉市長が露呈させた日韓「合意」の本質

すでに熊谷俊人千葉市長本人のツイッターでの発言が批判を浴びていた件です。

 熊谷市長は会見で「朝鮮学校が地域から孤立しないように交流事業に補助してきたが、日韓合意を否定する展示などをしたことは、市の思いを踏みにじる行為だ。今回はもとより、これからも(同校への補助金交付は)厳しい」と述べた。

 昨年9月1日付で同校から交付の申請があり、市も同5日付で最大50万円の交付を決定していたが、同年度末に提出された実績報告書やこれまでの市議の指摘などを踏まえ精査したところ、日韓合意を否認する展示内容などが外国人学校地域交流事業の要項とそぐわないとされた。

2015年末の日韓「合意」なるものの欺瞞性はいまさら指摘するまでもありませんが、今回の千葉市長の判断は、日韓「合意」の“使い方”としてはすこぶる“正しい”ものだと言うべきでしょう。日本軍「慰安婦」問題についての記憶を封じ込めるのが日本政府の狙いだったのですから。

日本政府はなぜ「法的責任」を否認するのか

慰安婦」問題が浮上した当時の宮澤内閣以来、この問題に対する日本政府の態度として一貫しているのが「法的責任は認めない」というものです。そしてこの「法的責任」の認否こそ、「慰安婦」問題に限らず、戦後補償問題の多くのケースで被害者が重視するポイントの一つであり、日本政府や日本企業が頑なに拒んできたポイントでもあります。日本政府や日本企業は、戦争被害者が「ひどい目にあった」ことについては認める用意があるのに、自身がそうした被害に対して法的責任を有することは、決して認めないわけです。しかし、なぜなのでしょうか? 客観的に見れば、日本政府が「法的責任」を否認することは、日本政府の「謝罪」が曖昧で誠意のないものだという疑念を掻き立てる理由の一つとなっており、日本の立場を有利にする態度とは思えないからです。


「法的責任を認めようとしないのは、補償しなければならなくなるから」なのでしょうか? しかし、法的責任を認めた上で賠償・補償を拒否することは可能です。時効(除斥期間)に訴えたり、「国家間で解決済み」とするのがそれで、現に日本政府はそうした主張も行ってきました。たしかに法的責任を否認しなければ、補償を拒否するための“防衛線”が薄くなるとは言えます。しかし、公的な補償はしないまでも法的責任があることをきちんと認めれば、そのことは被害者にも、支援者にも、そして国際社会にも評価されたはずです。例えばアジア女性基金にしても、「日本政府は法的責任を有することを認めるが、賠償に関しては“解決済み”という立場なので、民間からの寄付による“償い金”を支給することにしたい」という趣旨のものだったら被害者にどう受け止められたか。これは検討に値する問題だと思います。


仮に「賠償したくない」が法的責任を否認する理由になっているとしても、財政的負担が動機になっているということは考えにくいです。日韓基本条約のための交渉を行っていた時期には、大蔵省がブレーキを踏むということもあったようですが、残り少ない生存者の数を考えれば、いかに日本経済の停滞が長引いているとはいえ、負担になるほどの額になることはありえません。少なくとも「慰安婦」問題に関しては。
そもそも日本政府は、公的補償という体裁を避けるために、アジア女性基金や今回の「和解・癒やし財団」へあわせて60億円ほどを支出しています。それ以外に、海外向けのPR費や出張費等でまず間違いなく億の単位の金を使っています。それなら、最初から10億円を支出して公的補償を行っていたほうがよほど安上がりだったはずです*1


これはあくまで想像でしかありませんが、日本政府は「法的責任」を認めることで、日本軍や日本政府の行動に対する評価が(「犯罪」「違法行為」「不法行為」等々と)定まってしまうことをなんとしてでも回避しようとしているのではないでしょうか。「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」とか「数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた」とかであれば、ほとぼりが冷めればいくらでも曖昧にすることができる。しかし「法的責任」を認めれば、少なくとも「どの法に違反していたのか」という点でその責任の内実が明らかにならざるを得ませんし、人々は「慰安婦」問題を端的に「国家犯罪」として記憶できることになります。これこそ、日本政府が避けようとしている事態なのではないでしょうか?


このように考えれば、安倍内閣が韓国やアメリカなどの「慰安婦」碑に噛みつきまくっている理由も理解できます。日本政府の望みはとにかく「ほとぼりが冷める」ことなのです。そのためになら出費もいとわない。しかし「慰安婦」碑は「ほとぼりが冷める」ことを妨げる存在ですから、日本政府はそれを許せないわけです。

*1:先日北守さんが指摘しておられたように。https://twitter.com/hokusyu82/status/818513922588192768

マスコミが伝えない・教科書にも載らない07年「閣議決定」の欺瞞

2007年の米下院「慰安婦」決議の時には、まだ日本の右派の自爆っぷりを指摘するメディアもなくはなかったのですが、年末から年始にかけてのソウル・釜山両市の「少女」像をめぐるマスコミ報道は完全に自発的大本営発表の粋に達していますね。
2007年の、辻元清美議員の質問主意書に対する答弁書閣議決定)により、「強制連行を示す資料はなかった」ことが明らかになった……というインチキも、ほとんど既成事実化されようとしています。ということで、改めて07年閣議決定のインチキについて触れた拙エントリのリストをば。
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20130511/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20131104/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20131105/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20140409/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20150806/p1

安倍首相への公開書簡

本日、オリヴァー・ストーン監督や日米の研究者らが、ハワイ訪問を控えた安倍首相に対する公開書簡を出したことが報じられましたが、その全文と署名者リストが以下のサイトで公表されています。
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2016/12/oliver-stone-and-52-scholars-and.html
もちろん、首相が誠実な回答をすることなどこれっぽっちも期待できないわけですが、このように報じられることでハワイ訪問の欺瞞性を指摘する意見があることをアピールする、という効果はあるものと思います。

“日本を貶め”続ける日本人を支援する産経新聞

産経新聞』で元在特会幹部の山本優美子氏が【山本優美子のなでしこアクション】という連載を、「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」と国会でぶちあげた杉田水脈氏が【杉田水脈のなでしこリポート】と題する連載を、それぞれ始めていたことには気づいていたのですが(それにしても「なでしこ」しか思いつかないのか?)、さらに GAHT の目良浩一氏まで【目良浩一の米西海岸リポート】なる連載を始めていたとは。
産経新聞の原稿料がどんなもんか知りませんが、まあこれだけで喰っていけるようなものではもちろんないのでしょう。しかしこうして連載を持つことで山本氏は元在特会という経歴のロンダリングをいっそう進めていくことができます。落選中の杉田氏にとって返り咲きを狙うなら原稿料もらって写真と名前が新聞に載るというのはありがたいことでしょう。で、目良氏はといえば、難航している訴訟へのさらなる寄付を募ることができる、というわけです。
目良連載の第1回を見ると控訴審での成果が華々しく発表されています。曰く、「控訴審の主な争点は、原告に訴訟を起こす資格があるのかという点にありました。第一審では「原告は資格が無い」とされましたが、高裁では何とかわれわれの正当性が認められる可能性が高まったと思われます。」 目良氏の読みを素直に信じたとしてもようやく「門前払いされずに済みそう」というところにたどり着いただけ、ということですね。
面白かったのは「弁護士費用を値切れといった質問・助言も受けます」という部分です。ぼちぼち金をめぐる争いが起こるかもしれませんね。