主要エントリリスト(日本軍「慰安婦」問題関連)


「河野談話」について知っておくべきたった六つのこと(三分で読めるよ!)
台湾における「慰安婦」の強制連行
無責任きわまりない「河野談話撤回」論者たち
「完全否定」なんてブチあげていいの?
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その2
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その3
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その5
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その6(追記あり)
『「村山・河野談話」見直しの錯誤』ほか
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その7
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その8
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その9
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その10
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その11
16年前から明らかになっていた資料がいまさら問題にされる事態の情けなさについて
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その12
慰安所従業員の日記、発掘
橋下市長、「旧日本兵慰安婦問題」を捏造
強制連行の証拠は(探さ/公表させ)なかった!(追記あり・タイトル変更)
「寝た子を……」は差別主義者の定番の拠り所、そして秦郁彦の嘘
マスメディアがほとんどとりあげない安倍内閣の窮状答弁と称する事実上の逃避URL更新
日中戦争勃発直前の「廃娼運動」状況
「河野談話さえ葬り去れば大勝利」脳の恐怖
カミングアウトした元「慰安婦」の未成年率
右派は恨む相手を間違えている補足
「問われる戦後補償」(93年11月)
無理解の極北
河野談話の作成過程を検証するんじゃなかったの?
「慰安所」関連資料の隠滅について
自分の「仮説」にあわせて事実をねじ曲げてるのはどっち?
「慰安婦」問題否認論者に欠けているのは「自由意志」についての常識的な洞察
魂を自ら鎖で繋いだ人間には、鎖で繋がれていない程度のことが「自由」に思えるのだろう
永井先生の論文をちゃっかり「お役に立て」ていた読売新聞
「一種の徒弟修行」という詭弁について
元「慰安婦」の証言を否認しなかった警察
右派の「無能な味方」コレクション
これが21世紀の「進歩的文化人」(by 西尾幹二)だっ!
「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その13
教科書に虚偽の記述を加えさせる教科書検定
「強制されたというなら兵隊さんも同じ」論の誤り

再反論があるならさっさとすればいいのに

皆さんすでにご承知のとおり、映画『主戦場』の出演者のうちテキサス親父、ケント・ギルバート藤岡信勝藤木俊一(テキサス親父の中の人)、山本優美子の各氏がミキ・デザキ監督に対する民事訴訟を起こしました(訴状)。「Youtube の動画を無断で使用」などという主張は「引用である」で一蹴できそうですし、歴史修正主義*1などと言われて「名誉を毀損された」という主張は「論評である」で片付きそう……と、まあ無理筋な訴訟に思えます。原告の一人藤岡信勝と、原告に加わらなかった杉田水脈とが関わっている「新しい歴史教科書をつくる会」は、教科書刊行運動としてはもう完全に終わってしまっているので、こういうかたちで「運動」を続けるしかないのでしょう。

彼らの不満は煎じ詰めれば「最初に思ったような映画になってなかった」ということに尽きるわけですが、取材対象者のこうした不満に基づく損害賠償請求については、近年の判例でかなり高いハードルが設定されてしまっています。「女性戦犯法廷」についての ETV 特集をめぐって VAWW-NETNHK 他を訴えた裁判、およびチャンネル桜NHK スペシャルの「JAPANデビュー」シリーズをめぐって NHK を訴えた裁判。右も左も敗訴したこれらの裁判で、取材対象者の「期待権」にもとづく請求はいずれも斥けられたからです。

しかも、肝心要の有罪判決言い渡しシーンをカットされてしまった女性戦犯法廷関係者の裏切られ方に比べた場合、『主戦場』に出た右翼たちのクレームのは「自分たちの側が最後に話すように編集しろ!」というものにすぎないので、いじましいにもほどがあります。

 

訴状の中では「インタビューの順序」という見出しをつけて述べられているこのクレームがまったく正当性をもたないのは、次のような理由によります。

そもそも映画『主戦場』は、「慰安婦」問題に関してなにかしら新しい情報を掘り起こした映画ではありません。映画が含んでいる情報はほとんど全て、書籍やネット上のコンテンツの中に含まれていました。多くの観客の注目を集めたケネディ日砂恵氏の離反にしても、マイケル・ヨン氏と彼女がトラブっていたことはヨン自身がブログで暴露していましたから、まったくの新事実というわけではありません。

かといって、デザキ監督はジャーナリストを自称しているわけではないので、これはあの映画のマイナスポイントにはなりません。なにがいいたいかというと、あの映画で吉見義明氏や渡辺美奈氏などが語ったことは、監督を訴えた右派出演者たちにとって完全に予測可能なことでしかなかった、ということです。藤岡氏らは吉見氏らが語ることを先取りしてあらかじめ反論することができたはずなのであり、それをせずにかねてからの主張をただただ繰り返したのは自分たちの選択した結果なのです。

いまからだって「再反論」することはできます。"punish-shusenjo.com" などというこっぱずかしいドメイン名を獲得する暇があるのなら、さっさと再反論すればいいじゃないですか。それをしないのは……できないってことなんですよ。

*1:余談ですが、よく「歴史修正主義」という用語にクレームをつけて「歴史改ざん主義と呼べ」と主張するひとがいます。しかし「歴史改ざん主義者」と誰かを呼んだ場合、「歴史修正主義者」と呼んだ場合に比べて「事実の摘示である」と判断される可能性は高くなるような気がしますね。

『主戦場』への遠吠えまとめ

先日ご紹介した山岡鉄秀に加えて、ケント・ギルバートが『正論』の6月号で負け惜しみを書いています。とるに足らない内容ですが、「性奴隷の定義がどんどん勝手に広げられていく」と「かつてのGHQの「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」のようで洗脳そのものです」というクレーム(いずれも96ページ)には笑いました。映画は「性奴隷」の定義について国際法を参照しつつ出崎監督の見解を示していくのですが、カリフォルニア州弁護士にとってこれは「勝手に」なのだそうです。後者については、右派論壇が盛んに言い立てる「WGIP」論の空虚さを示すものです。その他、現時点で気づいたものをメモ。

-テキサス親父日本事務局 2019年4月16日 「フェイキュメンタリー・フィルム 切り取り・デマ・捏造のカタマリ」

-日本会議 2019年4月19日「ドキュメンタリー映画「主戦場」について」

小林節なんかに取材したせいで、たしかにあの映画の日本会議に関する記述には事実に反するところがあったので、この抗議については「負け犬の遠吠え」とは言い切れないですね。

-なでしこアクション 2019年4月23日 「映画「主戦場」について」

その他動画をいくつか。

-字幕【テキサス親父】 慰安婦欺瞞ドキュメンタリー「主戦場」-Part1 - YouTube

-字幕【テキサス親父】 慰安婦欺瞞ドキュメンタリー「主戦場」・その2 - YouTube

-【上念司の深掘りPart5】① ヤッちまった師匠SP!まさかのケント師匠が騙されて反日映画に出演!? - YouTube

-従軍慰安婦映画『主戦場』の悪辣な手口|山岡鉄秀|『月刊Hanada』2019年(令和) 6月号|花田紀凱[月刊Hanada]編集長の『週刊誌欠席裁判』 - YouTube

 

植村裁判札幌地裁判決について

元朝日新聞記者の植村隆氏が櫻井よしこ氏を訴えていた民事訴訟の判決が、去る11月9日に札幌地裁で言い渡されました。結果はみなさんご承知の通りで植村氏の請求が棄却されましたが、一審の結果がどうであれ実質的な決着の場が札幌高裁になるであろうことは、双方の当事者や支援者にとっても織り込み済みだったと思います。
すでに原告は控訴する旨を公表していますが、ここでは原告植村氏の支援グループが公開している判決要旨に基づいて、地裁判決について当ブログの見解を述べておきたいと思います。


判決要旨のうち、実質的に勝敗を分けることになった部分は「3摘示事実及び意見ないし論評の前提事実の真実性又は真実相当性」です。裁判所の判断については判決要旨をご覧いただくとして、植村氏に関する櫻井氏の記述の真実相当性を判断するうえで非常に重要な事実として、彼女が日本軍「慰安婦」問題について公に発言するようになったのは1996年以降である、というものがあります。1990年から91年にかけて取材し記事を書いた植村氏とは異なり、櫻井氏は92年に刊行された資料集(大月書店)や95年に刊行された吉見義明さんの『従軍慰安婦』(岩波新書)などの調査・研究の成果を参照できたし、また参照すべきだったのです。近年まで続いていた植村氏への攻撃については、過去四半世紀の研究の蓄積をふまえたうえでなされたのでなければ、真実相当性があったと認めることはできないはずです。
しかし判決要旨を見る限り、裁判所は植村氏の記事が掲載された時期に入手可能だった資料のみをとりあげ、それをもってして「……と信じたことについて相当な理由があるといえる」という判断を下してしまっているように思えます。


もう一つ、植村氏の義母が「遺族会」の幹部であったという事情も真実相当性を認める根拠の一つとされています。しかし櫻井氏は、特に公知の事実というわけでもなかった植村氏の縁戚関係には注目する一方、植村氏の91年8月の記事が執筆・掲載された時点では金学順さんを支援していたのが挺対協(当時、現「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」)であって「遺族会」ではなかったこと、12月の記事が掲載されたのはすでに提訴のあとで各社とも植村氏の記事とさして違いのない記事を掲載していたこと、さらに12月の記事が掲載されたのは大阪本社版だけであること……などの、より明白な事実を無視ないし軽視していたわけです。これでなぜ「……と信じたとしても、そのことについては相当な理由がある」などと言えるのか、非常に疑問に思います。

「報道しない自由」を謳歌する『読売新聞』

2014年8月以降、『読売新聞』が非常に浅ましい『朝日新聞』バッシングに加担してきたことはみなさんご承知のとおりです。その汚いやり口については、当ブログでもその一例を紹介しておきました。
さてその後、3つの右派グループが『朝日』を相手に起こした訴訟はすべて『朝日』の勝利で終わりました。とりわけ、日本会議のメンバーも関わった訴訟(当事者は「朝日・グレンデール訴訟」と称しています)では、法律論で門前払いにするのではなく原告の主張に対する事実認定が行われ、「朝日の誤報のせいで!」という右派の主張が否定されています。
また、植村隆・元『朝日新聞』記者が櫻井よしこ西岡力らを訴えた訴訟はまだ判決がでていませんが、その過程で櫻井・西岡両氏の主張にこそ大きな誤りがあったことが明らかになっています。
このように、司法の場で『朝日新聞』バッシング側の主張が次々覆されているわけですが、では『読売新聞』はこれらの訴訟をどう報じているのでしょうか(「ヨミダス歴史館」による)。
まず驚かされるのは、「朝日・グレンデール訴訟」の原告が上告を断念し敗訴判決が確定した(今年2月)ことを報じていない、ということです。これによってすべての訴訟で『朝日』の勝訴が確定したという節目なのですが。
この訴訟の一審判決については小さな記事がでています(2017年4月28日朝刊)。この記事中で判決は次のように要約されています(原文のルビを省略)。

 佐久間健吉裁判長は「朝日新聞の記事が慰安婦問題に関する国際社会の認識や見解に何の影響も与えなかたっとはいえない」と指摘。一方で、「記事の対象は旧日本軍や日本政府で特定の個人ではなく、原告らの社会的評価が低下したとは認められない」と述べ、名誉毀損は成立しないと判断した。

あたかも原告の主張が一部認められたかのような書きぶりですが、しかし判決はこれに続けて次のように判断しています。まず「国際社会自体も多元的であるばかりでなく、前記エの各認定事実を考慮すると、国際社会での慰安婦問題に係る認識や見解は、在米原告らがいう(中略)単一内容のものに収斂されているとまではいえず」、したがって「それら認識や見解が形成された原因につき、いかなる要因がどの程度に影響を及ぼしているかを具体的に特定・判断することは困難であると言わざるを得ない」、と。要するに「朝日の誤報のせいで国際社会が誤解している」という主張は退けられているわけです。『読売』が引用した「何の影響も与えなかたっとはいえない」は言ってみれば自明の事柄に過ぎず、原告敗訴という結果に結びついているのは『読売』が引用しなかった部分の方なのです。これは「捏造」報道ではないのでしょうか?
では植村裁判の方はというと、なんと札幌地裁での対櫻井よしこ裁判の第一回口頭弁論を報じたのを最後に、一切報道していません。『朝日』を訴えた右翼グループの論理によれば、『読売新聞』の読者は、櫻井よしこ西岡力が自らの誤りを認めたことを知る権利を侵害されているわけですね。

安倍政権は朝日新聞の三連勝についてコメントすべき立場

ご承知の通り、外務審議官時代に国連女子差別撤廃委員会で「朝日の捏造」説をぶち上げた杉山晋輔が駐米大使になっています。赴任に先立ち『産経新聞』のインタビューを受けた杉山新大使は次のように発言しています。

 米国でもいろいろなところに慰安婦像が建ち、関係する決議が議会で通っている。大変遺憾なことです。日本を代表する立場の者として、できるだけいろんな地方に足を延ばし、総領事とともに肩を並べてこれまで以上に努力し、誤解を解いていきたい。

 私自身、2016年の国連女子差別撤廃委員会で、慰安婦に関する日本の考え方を説明しました。

 《杉山氏は外務審議官だった平成28年2月、国連女子差別撤廃委で、軍による慰安婦強制連行を報じた朝日新聞の誤りを指摘し、「性奴隷」との表現にも「事実に反する」と主張した》

 あのときに言った内容は鮮明に頭に入っています。日本政府の立場は、あれに尽きています。ああいう日本の非常に明確な確固たる立場があるので、皆さんにわかってもらう努力をするのが大使の重要な役目の一つだと確信しています。

《  》内は『産経』による補足部分です。


さて、3つの右派グループが『朝日新聞』に対して起こしていた「慰安婦」報道訴訟は、昨月24日までにすべて原告敗訴で決着しました。

先に決着していた2件(正確には同じグループが2つ訴訟を起こしたので3件)の訴訟はほぼ法律論で原告の請求を斥けたのに対し、最後に決着した日本会議系の訴訟では『朝日』の報道をめぐる原告の主張にも踏み込んで判断し、“朝日の誤報のせいで国際社会が誤解した”という主張も斥けられています。安倍首相自身も含め、安倍政権はこの右派のデマにのっかってきました。しかしその主張は司法によって斥けられたわけです。その意味で、これは極めて重要な判決です。
誰かこの点について、質問主意書で追及してくれる国会議員がいればいいのですが。

上告もせずに終わっていた「朝日新聞を糺す国民会議」訴訟

チャンネル桜が主導する「朝日新聞を糺す国民会議」が『朝日新聞』に対して起こしていた訴訟は一審原告敗訴、今年の9月末に控訴審でも原告敗訴の判決が下っていたわけですが、その後どうなったのか久しぶりにサイトを覗いてみたら、上告せずに敗訴判決が確定していたようです(上告しませんでしたとは書いてませんが、期限はとっくに過ぎているのに「上告しました」というお知らせがないのでそのように判断しました→コメント欄もご参照下さい)。
こちらに控訴審判決がアップされているのですが、言うまでもなく原告の完敗です。


争点1:朝日の「慰安婦」問題報道により原告(控訴人)らの「国民的人格権・名誉権」が侵害されたか


争点2:誤報を訂正しなかったことは不法行為


争点3:「知る権利」が侵害されたか


争点4:除斥期間は経過しているか


争点5:朝日英字紙の記事は損害を継続させているか


ご覧のとおり、どの争点についても原告の主張は退けられています。