自分の想像力のなさを他人に投影するひとについて(追記あり)


いま現在11日だけど、一日の最初のエントリにするにはつまらなすぎるネタなので10日分に追記。
私が「中国様の言う事を聞いてA級戦犯分祀しろよコノヤロー」と主張した、A級戦犯分祀運動をやっている…とする根拠をkikori2660氏が説明してくれるはずだったのだが。ふたを開けてみればkikori2660氏の引き出しがいかに乏しいかが改めて明らかになっただけだった。

このように、「東京裁判史観に従い、そして中国の歴史認識に従って靖国神社に参拝するな。それはサンフランシスコ講和条約11条に違反する事で、もしそうするならば、日本は国際社会から見放され、独立国家として認められない」と繰り返し述べるロジックは、中国シンパ以外からまず聞いた事がありません。もちろん、東京裁判史観を日本人が捨て去る事を望む連合国・欧米諸国などいないでしょう。しかし、SF講和条約11条に靖国神社を絡めた批判を行う例を他に聞いた事がないんです。あったら教えて下さい。

「このように」って、たった一例紹介しただけだよ(笑) 他に名前が挙がっている二人も含めてみな外務省のチャイナスクール(出身者)。そりゃあ(元)外交官だったら「問題が相手の国からはどのように見えているのか」を国民に紹介することが自らの使命だ、と考えるのが当然でしょう。インターネットには「サーチエンジン」って便利なものがあるんだからさ、一通り調べてからものを言ったらどうなんだろうね。現在、「中国シンパ」の定義を問い合わせているので、「首相の靖国参拝への賛否」とは独立の定義が帰ってこない限りこちらから反例は挙げません。なにを挙げても「そいつも中国シンパだ」と逃げるのが目に見えているから。「東京裁判史観*1を日本人が捨て去る事を望む連合国・欧米諸国などいない」というなら、明示的に言及するかどうかは別として講和条約11条を日本政府が尊重することを要求する、ってことじゃない。
他のところでのやりとりでも感じることなのだが、世の中には「相手の言っていることを理解したら負けだ」と思っている人がいるらしい。そういう人々にとって、「理解する」と「言い分を呑む」ことの区別は存在しないのだ。野良猫氏が裁判を「受諾」することと「納得」することとを混同していたのもその一例。靖国問題が中国側からはどのように見えているのか…を説明しようとしたら「中国様の言いなりだ」と思うのも同じ。コメント欄での「こんなに良い天気なのに二人とも俺の日記に一日中張り付いている気か?」というコメントにもそうした自己中心性がよくあらわれていると思う。自分の頭の上が晴れだったら日本全国晴れだ、と。
ついでだけど、ほんのいくつかコメントつけただけでこの手の人々がよく見せるのがこういう反応。

しかも一日中張り付いちゃって、ものすごい青春してるって感じ!俺が突然いなくなったら淋しくなって死んじゃうんじゃねえの?(笑)

「俺って相手にとってすごい重要な存在なんだよ」というナルシシズムと、「これ以上突っ込まれたくない」という逃げの姿勢を上手く調停してくれるのがこの種の「相手を粘着と非難する」手口ですね。そもそも最初に相手に言及したのが自分の方だ、ということにはホッカムリしてるし。なんかストーカーに「キミ、ボクのこと好きなんだよね? ねっ?」と言われているような気分になるが、ストーカーと違って実害はないから、まあ滑稽なだけである。


で、いよいよ「中国様の言う事を聞いてA級戦犯分祀しろよコノヤロー」というの主張を論証してくれるはずの部分。

  1. 自身のブログにて「戦争犯罪に関する話題に特化した別館です」と銘打ち、旧日本軍及び日本の戦争責任の追及を行っている。
  2. しかも中国の主張を全面的に取り入れたプロパガンダ的な記述のみ。
  3. 小泉首相靖国参拝を批判、いわゆる富田メモまで利用した攻撃。
  4. 中国シンパしか使わない、「靖国参拝はSF講和条約11条違反」というロジックで保守派批判。

なんじゃこりゃ。「これ以上何か説明がいりますか?」と自画自賛しているけど、「これ以上」もなにもまったく説明になってないじゃん。自分がなにを論証しなければならなかったか、分かってますか? 「中国様の言う事を聞いてA級戦犯分祀しろよコノヤロー」と私が主張している、ということですよ? 問題だらけでどこから突っ込もうか悩むところだけど、まず全体としてこれが「A級戦犯分祀」論をぜんぜん導出できていない、ということ。仮に1.〜4.をすべて認めたとしても、そこからは「A級戦犯合祀は構わないから、首相は靖国に参拝するな」という主張を導くこともできるし。誰を祀るかは宗教法人たる靖国神社が決めることで、政府が分祀を求めるのはおかしい*2、だから「分祀」ではなく靖国に参拝しないことが解決策であるべきだ…というのがむしろ左翼のオーソドックスな主張でしょう。要するにこの人は、自分が「AかBか」という選択肢しか思いつくことができず、そこで「AでないのならBに違いない」と考えているだけなのね。Cという選択肢もDという選択肢もあることに気づいていれば、「AでないならBかCかDか、あるいはまだ私が気づいていないXだろう。他のエントリの○○といった記述からはDであると考えてよいのではないか」といった発想ができるはずなのに、この人にはそれができない。というのも、首相の靖国参拝に反対したというだけでこの人は「中国様の言いなり」認定を下してしまうので、「なぜ・どのようなロジックで」反対しているかを検討してみようという気にもならないわけでしょう。


次に1.〜4.の各項について。1.はまあいいでしょう。「旧日本軍及び日本」以外の戦争責任もとりあげてはいるけど、量的には圧倒的に旧日本軍関係が多いから。もちろん、この人にとってはもう1.自体が気に入らないわけで、2.〜4.は単なる付け足しなんでしょう。いい加減極まりないのも無理はない。2.は南京事件に関して「犠牲者30万人説」をとっていないこと一つをみても簡単に反駁できるんだけど、そもそもこの種の人々は(最近だとたとえばここの「潜水艦」氏とか、ここの「炎如」氏とか先日ここにコメントしていたmonkey氏とか)は、根拠を示してなにかを主張する、という発想がないのだろうか? 「中国の主張を全面的に取り入れたプロパガンダ的な記述のみ」と主張するなら、全部とはもちろん言わんけどもせめて主要なエントリについて「中国の主張を全面的に取り入れたプロパガンダ的な記述」であることを具体的に指摘するのが筋というもんでしょう。それをまったくせずになにかを論証できたと思い込んでいるのはあまりにも滑稽。そんなのが通用するならこっちも「kikori2660氏の主張は2chのコピペ並みのでまかせのみ」と「論証」しちゃおうかな(笑) 次に3.だが、私が「富田メモ」を小泉の靖国参拝批判のためにいつ・どこで使ったというのだろうか? これも高校生以上なら「このエントリの○○という部分で」などと具体的な根拠を示すことが必要、と気づきそうなものだが、2.同様根拠レス。私が富田メモに言及したのはメモの登場で右往左往する右派をおちょくるためだったんだけどな*3。それから、「小泉首相靖国参拝を批判」はもちろんしているけれども、その批判にはいろんな理路のものがあり得る、ということをこの人は分かってない。あるいは分かってないふりをしている。4.の「靖国参拝はSF講和条約11条違反」というロジックが「中国シンパしか使わない」ものだ、という前提の論証にkikori2660氏が失敗していることは上で示したが、それはおくとして私がいつ「靖国参拝はSF講和条約11条違反だ、それゆえ首相は靖国に参拝すべきでない」と主張したのだろうか? これも、高校生以上なら「このエントリでそう主張している」と具体的に引用してみせる必要があると考えそうなものだが、相変わらず根拠レス。議論というのは見解を異にする相手とやるものなのだから、自分の思い込みを書き連ねるだけではダメなんですよ。「論拠」ってものが必要なの。「お前は○○と主張している」と言いたいなら、その「○○と主張している」文章を挙げないと。本館の方も別館の方もサイト内検索できるんだからさ。自分でもやってみたけど、講和条約についてなんてあんまり言及してないですよ、そもそも。だいたい先日のエントリだって小林よしのりの連載をうけて書いたものであって、首相の靖国参拝反対論なんて展開してないでしょ? 最大の目的は「裁判なしに判決はない」ことが分からないバカにバカとはっきり言うことですよ。


というわけで箸にも棒にもかからん愚論の実例がもうひとつ増えてしまったわけです。

追記:このエントリへの先方の反応。

kikori2660 『>Apemanさん
長いよ!どうせ自分の日記に書くなら手短にしてよ。つーか、人様のブログのコメント欄にまで出動するあんたがストーカー呼ばわりかいな!(笑)
(後略)

この程度の文章を「長い」と感じるなら、講和条約第11条論議になんて口を出すべきでないと思いますね。ものごとを順序立てて論じることにできない人間がよく「長い」って苦情を言うんですよ。議論ってのは自分が言いたいことを言いたい放題言えばいい、てもんじゃないわけ。myhoney0079氏のところの方があんたより先にここに目を付けてたんだから、そっちにコメントしたらこっちの目にとまるのは当然でしょう。一方的で的外れなこと書いているのをこっちが見過ごすべき理由はないからね。

*1:問題なのは「史観」じゃなくて東京裁判に対する日本政府の法的義務なんだけどね。

*2:私人がそうせよと主張するのはもちろん構わないわけだが

*3:だいたい、A級戦犯合祀を理由に昭和天皇靖国参拝を止めた、というのは富田メモ以前から言われていた、というか多数派説だったでしょう、少なくとも左派のなかでは。いまさらあのメモが出てきたところで靖国に対する左派の主張はちっとも変わらんって。