戦記・部隊史を探す…

古書店のなかには戦記・部隊史の類いをたくさん扱っているところがあるので、そうした古書店を選んでちょくちょく立ち寄っては、大きな戦争犯罪に関わった部隊の部隊史などないかと探してみるのだが、同じようなことをしたことのある方ならご存知のように、戦友会などが編纂する部隊史はほとんどが「聯隊史」である。たまに中隊史なども見かけるが、これは聯隊が兵営の単位であり、独立して戦闘を行なう基本単位であって、「聯隊旗」はあっても「師団旗」はないこと、他方中隊は戦場や内務班で実際に顔をつきあわせる単位であること、などが理由と思われる。ところが、私なんぞの頭には「○○軍」とか「○○師団」といった単位でしか戦史が頭にはいっていないので、「(地名)歩兵○○聯隊史」と函書きされていてもさっぱり見当がつかず、一つ一つ目次をみてみるしかないわけである。以前に、杭州湾上陸作戦に参加した聯隊の聯隊史を見つけたのだが、そのあたりの記述は非常に簡潔で、あまりの簡潔さについ勘ぐりたくなるくらいだったので購入は控えた。ただ、民家で見つけた金(きん)を持ち歩くうちにあまりの重さに労役の対価として次々にやってしまった…という記述はある。軍隊が金(きん)を徴発する必要などあるはずもなく、歴然とした略奪であるのだが、悪びれた風もなく堂々と書いているあたり、略奪に対する罪悪感が乏しかったことを反映していそうである。
また、連休中に見かけたとある中隊史には、復刻版の戦闘詳報が付録としてついていて、非常に興味深かった。ただ、価格が価格なのでやはり手が出ず。


また、坂井三郎の『坂井三郎 空戦記録』の前書きになかなか興味深いエピソードが紹介されている。敗戦後、各種文書を処分するよう命令が出たが、自分は処分しなかった(おかげで著述の参考にできた)。なぜか? 周りに「敵機をたくさん落としたお前はきっと戦犯として処罰される」という人間がいて、坂井氏が「そんなはずはない、戦犯になるのは捕虜を虐待したような人間だ」と反論しても譲らない。じゃあ、というので意地になって(敵機を撃墜したことを証明する)文書を残しておいたのだ、と。ポツダム宣言第10項についての一般将兵の理解が様々であったことを伺わせるはなしである。