東潮ライブラリィ、「史実記録」シリーズ

映画を観にいったついでに寄った古本屋での収穫。東潮社刊、坂邦康編著、東潮ライブラリィ「史実記録 戦争裁判○○法廷」シリーズの4冊を入手。昭和42年から43年にかけて刊行された新書サイズの本である。表紙はご覧の通り。

裏表紙には「ミゾリィ艦上の降伏文書サイン」(原文ママ)の写真が配されている。事件の概要、被告の階級・氏名・所属部隊・判決等のデータが実名で記載されている。ネット上ではこのシリーズへの言及は非常に限られており、裁判についての客観的なデータとしては他にも参照可能なものがあるとはいえ、昭和40年代における日本人のB級戦犯裁判に対する認識を知るための史料としてはけっこう貴重かも。奥付の前の頁にはどの巻にも次のような文句が記されている。

このような悲惨な記録を公開するのは、今はなき旧日本軍隊のしかばねや、戦争の古傷をえぐり出すためではない。
二十数年前のできごとが、あまりにも歪曲され、勝者は正義なりとし。
また報道や宣伝に浮かびあがった一部のものと、一将の功(戦記)のみが、ふたたび称えられんとしているからである。

ここには「もし日本が戦争に勝っていたら、日本も勝者の正義を敗戦国に押しつけていたであろう」ということへの想像力も、戦争犯罪の犠牲者への想像力もみられない。その一方で、同じ旧軍関係者でもプラスの脚光を浴びたもの、特に高級指揮官や参謀たちへの呪詛もにじみ出ており、この当時の日本人の戦争観をよく反映していると言えそうである。