否定論本、新刊

東中野修道センセイ待望の新刊は『南京「百人斬り競争」の真実』(ワック)。また、冨澤繁信、『「南京事件」発展史』(展転社)も今年1月に刊行だ!
両者をあわせると否定論の今後のアプローチは要するに「南京事件はどんどんはなしが大きくなってる、それは中国の情報戦によるものだ」ってことかな。まだどっちもぱらぱらとながめた程度で、現在たまってる宿題を片付けたら改めてとりあげますが、それぞれ1点ずつ。まず冨澤本ですが、笠原十九司の『南京難民区の百日』を集中的にとりあげた箇所があるんだけど、そのなかで『南京難民区の百日』が現在絶版で入手できない云々と書いてある。たしかに95年に刊行された単行本は現在品切れ状態なんだけど、2005年には岩波現代ライブラリー文庫に収録されていて、今日地元の本屋で見てもAmazon.co.jpでチェックしてもいずれも在庫がある。笠原氏らの研究の最新の成果をどこまでまじめにフォローしているのか、疑問符がつくポカである。また東中野本だが、「国民党は当時百人斬り報道を非難していなかった」とまたもやどっかで聞いたことがある議論をしているのが目につく。「中国兵」が「中国人」と誤訳されて伝わっているのに非難していないのはおかしい、って理屈なんだけど、その中国語訳に「中国人の一人を鉄兜もろとも唐竹割」云々と書いてあれば読んだ方も中国軍兵士のことだと思うでしょうな。敗走している側がリアルタイムで事態を正確に把握できないことのどこがおかしいのか、さっぱり分からない。
続きはまた、いずれ。