防衛研究所の「見解」その後

一昨日のエントリのコメント欄にてmahounofuefukiさんからご教示いただきましたように、毎日新聞続報をだしております。
今回とりあげられているケースは資料に対して「反論」する見解を付したものではなく、その限りで

▽広瀬琢磨・防衛研究所図書館史料室長の話 所見は資料保存の価値判断を示すため、内容を「要約」したもの。事実関係を解釈したものではない。所見を訂正する必要はない。

という弁明にも一理あるように見えますが、それにしても「当事者の貴重な証言」と価値判断を下しているのは出過ぎた真似と言うべきでしょう(当事者、というなら生存者の証言も当事者の証言です)。


以前にどこかで書いたと思いますが、自衛隊が国内外*1で広く信頼される組織になりたければ、やはり旧軍の問題点を率直に認める姿勢をアピールすることが一番である、と私は考えます。組織としては断絶があるとはいえ、人脈的にも自衛隊には旧軍関係者が多数在籍していましたし、機能的にいっても旧軍に相当する組織ですから。日中戦争アジア・太平洋戦争についての倫理的、歴史的な評価をすべて排したとしてもなお、旧軍には「勝ち目のない戦争」を始め、降伏を引き延ばして内外の犠牲を無用に増やし、合理性を欠いた戦争指導で国民の犠牲を増やした責任があることは何人も否定できない事実でしょう。むろん史実を枉げてまで旧軍バッシングをやれというのではありませんが、こうも旧軍を擁護しようとする姿勢が見えるようでは、長期的には自衛隊のためにもならないんじゃないでしょうか。自衛隊にもっと積極的な役割を与えたい、と望む人々こそが自衛隊歴史認識により厳しい目を注ぐ動機をもつべきであるはずです。

*1:もちろんこの場合の「国外」はさしあたり友好的な関係にある国に限ってよいでしょうが。