「教育内容が問題」というのなら……

朝鮮学校への無償化適用問題をめぐっては、「この社会が個別の学校の教育内容にかくも関心を持っていたのか!」と新鮮な驚きを覚えたものですが、せっかくですからその関心を陸上自衛隊小平学校にも向けてもらいたいものです。なにしろ学生は授業料を徴収されるどころか、給料を(もちろん税金から!)もらいながら教育を受けてるわけですから。
小平学校の人事教育部長、池田整治一等陸佐については碧猫さんがフォローされているのでご存知の方も多いでしょう。その碧猫さんから今月初めに池田一等陸佐のメルマガ(4月26日、「サクラ・サクラ」)について情報提供をいただきました。
しょっぱなから百匹目の猿現象めざし」とか「私は自分で出版したマインドコントロールを3回繰り返して読んで、心から腑に落ち」などと飛ばしております。「マインドコントロール」というのはもちろん自分自身の著書『マインドコントロール――日本人を騙し続ける支配者の真実』(ビジネス社)のことであるわけですが、自分で書いたものを読んで「腑に落ち」るとは、ずいぶんと自己愛の強い方のようです。で、今回紹介するのは池田一等陸佐が「語り聞かせている」ところの「真実の歴史の物語」だそうです。まあ突っ込みどころはつきないのですが、今回は次の部分を。

      ・・・そして戦後・・・

「諸国から訪れる旅人達よ 
この島を守るために日本軍人がいかに勇敢な愛国心をもって戦い
そして玉砕したかを伝えられよ」


戦後再建されたペリリュー神社の境内に建立された詩碑に刻まれているこの詩は、
アメリカ太平洋艦隊司令長官・ミニッツ海軍元帥が
ペリリュー島で玉砕した日本兵に感銘して作った詩(うた)である。

テルモピュライの戦いで“玉砕”したレオニダス王以下のスパルタ戦士を讃えた詩を知っている者はただちにうさんくささを感じとると思います。ウィキペディアの「ペリリュー神社」の項にこの「詩(うた)」をめぐる議論が記載されていますが、そこで注目されていない重要な問題があります。池田一等陸佐の紹介によれば、この「詩(うた)」は「旅人達」に対して、かくかくしかじかと伝えよと命じています(「られよ」は敬意を表す助動詞)。ところがペリリュー神社にあるという碑文の英文は次のようになっています。

Tourists from every country who visit this island should be told how courageous and patriotic were the Japanese soldiers who all died defending this island.

強調は引用者。つまりここでは旅人は誰かからかくかくしかじかと聞かされねばならない、ということになっています。はなしがまるで逆*1。これは具体的な証拠のない推測ですが、この英文は「られよ」を受動の助動詞と誤読したうえで日本人が作文した英文でしょう。そもそもこの英文は文体的に「詩(うた)」になってません。テルモピュライの詩の有名な一節(の英訳)と比較してみれば明白です。

Go tell the Spartans, thou that passest by,That here, obedient to their laws, we lie.

ちなみにシラーによる独訳は次の通り。

Wanderer, kommst du nach Sparta, verkündige dorten, du habest
uns hier liegen gesehn, wie das Gesetz es befahl.

*1:テルモピュライの詩にならうなら、詩はこの島を訪れる者に対して、日本人にかくかくしかじかと伝えよと命じるものになるのが理であり、ウィキペディアによれば実際初期バージョンはそうなっていたようです。