細菌戦国会賠償請求訴訟の判決より

一昨日のエントリで言及した朝日新聞の記事中にある国家賠償請求訴訟の一審判決には次のような一節があります。

 腺ペスト(ヒトのペストの中で最も多く,80%から90%を占める。)や皮膚ペストは,ペストに感染したノミに噛まれて感染する。肺ペストは,ペスト患者の喀痰や飛沫が感染源になる。敗血症ペストは主として腺ペストに続いて起こる2次性のものが多い。特に本件の被害地域のように人的な繋がりが強い地域では,ペストはそのような社会形態を介して伝播し,人々を次々に死に追いやることから,差別とお互いの疑心暗鬼を招き,地域社会の崩壊をもたらすとともに,人々の心理に深刻な傷跡を残す。そして,ペストは本来齧歯類の病気であることから,ヒト間の流行が治まった後も,病原体が自然の生物界で保存され,ヒトの間に感染する可能性が長く残存する。その意味で,ペストは,地域社会を崩壊させるだけではなく,環境をも長期間に渡って汚染する病気であるといえる

 コレラは,経口的に伝染して起こる消化器系伝染病である。米のとぎ汁様の激しい下痢と嘔吐による脱水症状や,筋肉の痙攣を起こし,治療が行われないとかなりの割合で死に至る。極めて苦痛の大きい伝染病である。ただし,現在では,適切な輸液と抗生物質の併用により致命率を大きく下げることができる。
 伝染力が強く,次々と死者が出ると,地域社会において差別やお互いの疑心暗鬼を招くことも多い

強調はいずれも引用者によるものですが、強調部分は細菌兵器に固有の性格、その残虐性を指摘したものです。と同時に、原子力発電について考えるうえでも示唆に富む指摘でしょう。