redicecubepp 氏とのやりとりまとめ

普段は twitter で“議論”的なことはほとんど行なわないのですが、このエントリで言及した私の「「韓国で軍隊が村に現れて娘をさらって行った的なイメージ」が流布しているというのが仮に本当だとして、それに一番貢献しているのは歴史修正主義者たちだと思うね。」というツイートに反応があったので、珍しくつきあってみました。

こんな感じで始まり、先方の返答は現時点では27日で途切れています。内容的に目新しいところは一つもないのですが、再確認できたこともないではないので、ごく簡単に総括をば。
今回私は歴史修正主義者のお気に入りの手法である「証拠を出せ」をわざと真似てみたのですが、それによって改めて、「慰安婦」問題否認論者にとって吉田清治証言が命綱である(ただしその命綱はどこにも繋がれていないのですが)ことが浮き彫りになっています。彼が証拠と称して持ち出してくるものは結局のところすべて吉田証言に還元されると言っても過言ではありません。したがって、次のような問いにはだんまりを決め込むことしかできないわけです。

この問いに答えようとするなら、いまさらどれほど吉田証言をあげつらってもなんの意味もない、という現実に直面しなければなりませんから。その他、『日本の200年』(アンドリュー・ゴードン)や『従軍慰安婦』(吉見義明)からの恣意的な引用*1もお約束ですね。
10月27日のやり取りに至ると彼は(1)地域を朝鮮半島に限定しなければ「銃で脅されて拉致」に類する事例があること、(2)支払われた軍票、軍事郵便が戦後紙屑になったこと、(3)前借金で縛られていた女性がいたことを認め、また沈黙によって事実上(4)「銃で脅されて拉致」という類型でなくても「強制連行」と評しうることを認めています。さらに慰安所での女性たちの活動の自由については「休みの日は将校と遊びに行っていたという記録があります」としか言えずに終わっており、これまた事実上(5)行動の自由が大幅に制限されていたこと、も認めたかたちになっています。あとは(6)旧植民地地域では仕事内容を偽った、欺瞞による募集が行なわれていたこと、(7)売買春の域を超えた暴力が振るわれたこと、(8)「慰安所」制度が非公式の、“私設慰安所”での性暴力を助長したこと……あたりを認めてくれれば、事実関係についてはほとんど隔たりがないことになります。
しかし「慰安婦」問題否認論が吉田証言を命綱としていることとの関連で言えば、(3)、(4)を認めたことが決定的である、ということになるでしょう。「性奴隷」という概念によって一体なにが問題とされてるかを彼が理解していたなら、(3)と(4)は全力で否定しなければならないポイントだからです。
結局、「慰安婦」問題否認論とは歴史的事実の否認であるよりもまず、「性暴力」についての時代遅れの理解にもとづいている、ということですね。