読書メモ

RAAについてのルポ『敗者の贈物』(ドウス昌代講談社文庫)をずっと古書店で探していたのになかなか見つからないので、図書館で借りて読む。RAAの設立にせよ米軍兵士による性的暴行事件にせよ、日本軍の中国大陸におけるふるまいに照らして納得した日本人が少なくなかったことがやはり興味深かった。


講談社の「天皇世紀歴史」シリーズ第8巻、『昭和天皇と戦争の世紀』(加藤陽子)に一通り目を通した。「二・二六と終戦のご聖断」神話を越えたところで昭和天皇の政治関与、戦争指導の実態をどう評価するかが、この分野の研究に一般人が抱く最大の関心であろうが、「西園寺の死後、昭和天皇は個人として歴史を動かす人とならざるをえなかったと、筆者が考えているから」(336ページ)という著者の言葉に現れているように、どちらかと言えば「強い関与があった」派ということになるだろうか。
なお、駐中独大使トラウトマンの仲介による講和交渉に際して参謀本部が積極姿勢を示したのに対し、むしろ政府が強硬姿勢を示した結果として交渉が決裂したことについては、当ブログでも何度かとりあげてきた。この点について、政府側に「一つに為替相場維持の強い要請があった」ことが理由として指摘されている(307ページ〜。もう一つの理由は、停戦がなった場合に陸軍が対ソ戦を始めるのではないかとの懸念、とされている)。特にこうした観点から行動していた閣僚として、木戸幸一の名が挙げられている。記憶の限りではこうした分析はこれまで読んだことがない。経済史的な観点からの研究はあまり参照してこなかったからであろう。