さらに追記

秦郁彦氏といえば、こんな発言もしてます。

秦 全体主義国家と民主主義国家のどこで違いが出てくるかというと、民主主義国家では言論の自由がありますから、自国の軍隊といえどもひどいことをしたら、自国民の中から批判の声が出てくるんです。
 とくに女性の意見が英米では影響力が大きい。たとえば慰安所を設置することについて日本の女性は発言しないけれども、英米軍の現地司令官が兵隊の福利厚生で慰安所をつくったなんていうとすぐ通報が行くんですよ。従軍牧師、上院議員や女性団体に突き上げられて、すぐ閉鎖しろという中央の指令が行く。
 いわば後方における市民的常識のようなものが一つの抑止力になっているんですが、それがまったくない国というのは人間の獣性が幾らでも発揮されるところがありますね。
(『「BC級裁判」を読む』、日本経済新聞出版社、42ページ)

ここでは「慰安所」を閉鎖しろというシヴィリアンの圧力が肯定的に評価されていて、ということは「慰安所を設置すること」自体(「強制連行」とは切り離して)への否定的な評価が前提されているということになります。秦氏には反米的な動機がまったくといってよいほど感じられないという特徴があって、だからアメリカの美点を評価するという文脈ではこういう発言ができるという側面もあるかなと思いますが、それを差し引いてもやっぱり不思議ではあります。