「戦場から人が消える」

日経新聞の「リアルの逆襲」と題するコラム枠で1月6日に無人機がとりあげられていました。
戦場から人が消える ロボット3原則遠く

初めての爆撃の日。ブライアントは標的にレーザーを当て、 相方がミサイル発射ボタンを押した。2人の即死を映像で確認。片足を吹き飛ばされた残り1人も血まみれで長時間苦しんだ後に息絶え、任務は完了した。
無人機の操縦はゲームに似ているが、これは現実世界(リアル)だ」。ブライアントは戦場で身体に傷を負うことはなかったが、重い心的外傷後ストレス障害(PTSD)に今も苦しむ。

ミサイルが着弾して人々を殺傷する様子をモニターし続ける、という無人機操縦の特性ゆえに PTSD に苦しむパイロットがいる、という問題点は過去にも報じられており、「無人機」問題の一つとしての認識が定着していると言えそうです。
http://www.cnn.co.jp/world/35038939.html
http://globe.asahi.com/feature/100111/side/01_02.html
そうなれば軍が次に考えるのは、「PTSD の効果的な治療法の開発」でしょう。すでに2010年に次のような

軍が将兵の健康に責任をとるのは当然であり、このような研究が犯罪被害者や災害被害者にとって助けとなる可能性もある……と思う反面、「安心して人が殺せる」ための技術となってしまう危険性も感じます。もともと無人機自体、自軍の人的損害を抑えて「心置きなく人が殺せる」ようにするための技術であり、パイロットの PTSD は(語弊のある言い方ですが)濫用への歯止めとなりうる要因と考えることもできるわけですが。戦争という巨大な不条理の中では、人道的な要求に応えることが新たな非人道的事態を招く*1、ということの一例なのでしょう。

*1:ナチスガス室にもそうした側面があることについては、以前に当ブログで触れました。