極右政治家のおかげで、「戦犯裁判を受諾」がまたしても再確認されました

私は06年に「箸にも棒にもかからぬ愚論、『受諾したのは判決だけ』」という記事を書いて、右翼議員が国会で「講和条約11条で受諾したのは判決だけ」とブチあげるたびに日本政府がそれを否定する羽目になることを皮肉っておいたのですが、今回再び稲田朋美センセーがオウンゴールを決めたようです。

は3月25日、「東京裁判のすべてを受け入れている。(東京裁判の)どの部分についても、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にはない」との政府の見解を示した。岸田文雄外相が衆院外務委員会で、緒方林太郎衆院議員の質問に対し答弁したもの。
(後略)
(http://www.data-max.co.jp/politics_and_society/2015/04/34308/0401_ymh_1/)

緒方議員は今回、私が06年の記事で言及しておいた1998年(平成10年)04月07日、参院総務委員会での板垣正の質問に対する答弁を政府に再確認させたとのこと。問題のやり取りを適宜中略しつつご紹介をば。

○板垣正君 自由民主党の板垣でございます。
 きょう私は、東京裁判史観の見直しの問題、平和条約第十一条の問題、近隣諸国条項従軍慰安婦問題に関する政府見解の見直しの問題、あるいは村山談話の再検討について、さらには憲法論議の推進について、こうした問題について時間の許す範囲で、特に官房長官に政府の立場での御見解なりこれからの御意向を承りたいと思います。
(中略)
 そこで、まず初めに、先般の予算委員会におきましても総理、外務大臣等に御見解を賜ったわけでございますけれども、いわゆる東京裁判についての日本政府の公式的な立場であります。
 これについては、もうまさにずっと一貫して、講和条約第十一条によって東京裁判を日本は受諾しておるから政府の立場においてこれに異を唱えることはできないんだ、こういうことでございますし、さらにあの日の外務省の御答弁は、その内容に異を唱えることはできない、つまりあの裁判を受諾した以上拘束される、拘束というのは単に判決だけじゃなくて起訴の理由、あるいはそれによってもたされた判決の内容、こうしたものにも拘束されるというような趣旨の話であったと思います。
 そこで、改めまして、きょうは外務省にもおいでいただいておりますので、まず外務省の方から、拘束されるという立場についてより具体的に明快に御説明を願いたい。


○説明員(長嶺安政君) 御説明いたします。
 御指摘のとおり、先般、三月二十五日の参議院予算委員会におきまして、小渕外務大臣より、「この裁判につきましては、既に諸外国におきましても、学者の間でも裁判をめぐる法的な諸問題につきましては種々議論があることは承知をいたしております。いずれにしても、国と国との関係において我が国はサンフランシスコ平和条約第十一条で極東軍事裁判所の裁判を受諾いたしておりますので、同裁判について異議を唱える立場にはありません。」と答弁されております。
 ここで言います異議を唱える立場にはないという点につきましては、サンフランシスコ平和条約第十一条によりまして右裁判を受諾した以上、日本国として連合国に対し異議を申し立てることはできないと考えておる次第でございます。


○板垣正君 その点はこの間の答弁を繰り返され、十年前、二十年前と同じ答弁を繰り返している、そういうことにならざるを得ない。
(中略)
 三点の拘束があるんだとこの間説明がございましたね。それをもう少し具体的におっしゃってください。


○説明員(長嶺安政君) 御説明申し上げます。
 平和条約第十一条におきましては、まずその前段におきまして、日本国が極東国際軍事裁判所等の裁判を受諾することを規定しております。
 また、同条後段におきましては、右前段の規定を前提といたしまして、日本国において拘禁されている戦争犯罪人につきまして日本が判決の執行の任に当たること、恩赦、釈放、減刑などに関する事項は日本政府の勧告に応じて判決を下した連合国政府においてこれを行うこと、極東国際軍事裁判所の下した判決につきましては連合国の過半数によって決定するとの具体的な義務を課したものでございます。


○板垣正君 この間の答弁では、要するに判決だけじゃないんです、判決理由とか起訴のときの起訴状とかそういうことにも全部拘束されるんですという答弁があったじゃないですか。今おっしゃったような点はこれも問題なんです。
 今読み上げたとおり、あの判決を受諾した、だからあの当時なお巣鴨にせよ豪州にせよフィリピンにせよ死刑判決を受けた人も含めて千名を超えるいわゆる戦犯と称する人たちが刑の執行を受けていたわけですね。講和条約が結ばれたらそういう人たちが全部釈放されるのが国際法の原則ですよ。にもかかわらず、あえて十一条を設けて、これは日本政府の責任で刑の執行をやれ、釈放するかどうかはおれたちが決めるんだと。これが第十一条の趣旨ではありませんか。だから、現実に一部の人は昭和三十三年までその拘束が続いたわけですね。したがって、その問題も大きな疑問であります。
 この間の三点に拘束されるというお話はどういうことですか。


○説明員(長嶺安政君) 御説明申し上げます。
 この極東国際軍事裁判に係る平和条約第十一条におきましては、英語正文でジャッジメントという言葉が当てられておりますが、このジャッジメントにつきましては、極東軍事裁判所の裁判を例にとりますと、この裁判の内容すなわちジャッジメントは三部から構成されております。
 この中に裁判所の設立及び審理、法、侵略、太平洋戦争、起訴状の訴因についての認定、それから判定、これはバーディクトという言葉が当てられておりますが、及び刑の宣言、これはセンテンスという言葉が当てられておりますが、このすべてを包含しておりまして、平和条約第十一条の受諾が単に刑の宣言、センテンスだけであるとの主張は根拠を有さないものと解しております。

議事録を読む限り、政府説明委員もすすんで「すべてを受諾している」とは言いたくなさそうな感じも漂ってきますが、なにしろ板垣議員がしつこいものですから、最後には「平和条約第十一条の受諾が単に刑の宣言、センテンスだけであるとの主張は根拠を有さないものと解しております」とまで言われちゃっております。