「報道しない自由」を謳歌する『読売新聞』
2014年8月以降、『読売新聞』が非常に浅ましい『朝日新聞』バッシングに加担してきたことはみなさんご承知のとおりです。その汚いやり口については、当ブログでもその一例を紹介しておきました。
さてその後、3つの右派グループが『朝日』を相手に起こした訴訟はすべて『朝日』の勝利で終わりました。とりわけ、日本会議のメンバーも関わった訴訟(当事者は「朝日・グレンデール訴訟」と称しています)では、法律論で門前払いにするのではなく原告の主張に対する事実認定が行われ、「朝日の誤報のせいで!」という右派の主張が否定されています。
また、植村隆・元『朝日新聞』記者が櫻井よしこ、西岡力らを訴えた訴訟はまだ判決がでていませんが、その過程で櫻井・西岡両氏の主張にこそ大きな誤りがあったことが明らかになっています。
このように、司法の場で『朝日新聞』バッシング側の主張が次々覆されているわけですが、では『読売新聞』はこれらの訴訟をどう報じているのでしょうか(「ヨミダス歴史館」による)。
まず驚かされるのは、「朝日・グレンデール訴訟」の原告が上告を断念し敗訴判決が確定した(今年2月)ことを報じていない、ということです。これによってすべての訴訟で『朝日』の勝訴が確定したという節目なのですが。
この訴訟の一審判決については小さな記事がでています(2017年4月28日朝刊)。この記事中で判決は次のように要約されています(原文のルビを省略)。
佐久間健吉裁判長は「朝日新聞の記事が慰安婦問題に関する国際社会の認識や見解に何の影響も与えなかたっとはいえない」と指摘。一方で、「記事の対象は旧日本軍や日本政府で特定の個人ではなく、原告らの社会的評価が低下したとは認められない」と述べ、名誉毀損は成立しないと判断した。
あたかも原告の主張が一部認められたかのような書きぶりですが、しかし判決はこれに続けて次のように判断しています。まず「国際社会自体も多元的であるばかりでなく、前記エの各認定事実を考慮すると、国際社会での慰安婦問題に係る認識や見解は、在米原告らがいう(中略)単一内容のものに収斂されているとまではいえず」、したがって「それら認識や見解が形成された原因につき、いかなる要因がどの程度に影響を及ぼしているかを具体的に特定・判断することは困難であると言わざるを得ない」、と。要するに「朝日の誤報のせいで国際社会が誤解している」という主張は退けられているわけです。『読売』が引用した「何の影響も与えなかたっとはいえない」は言ってみれば自明の事柄に過ぎず、原告敗訴という結果に結びついているのは『読売』が引用しなかった部分の方なのです。これは「捏造」報道ではないのでしょうか?
では植村裁判の方はというと、なんと札幌地裁での対櫻井よしこ裁判の第一回口頭弁論を報じたのを最後に、一切報道していません。『朝日』を訴えた右翼グループの論理によれば、『読売新聞』の読者は、櫻井よしこと西岡力が自らの誤りを認めたことを知る権利を侵害されているわけですね。