文部科学省の御都合主義

法華狼さんのエントリ「『発掘捏造』毎日新聞旧石器遺跡取材班著」より。大槻(達也)教科書課長のコメントがすごすぎる。

 上高森遺跡の調査報告書は、発掘が始まった九三年以降、ねつ造の発覚までいっさい出ていなかった。文部省の大槻達也・教科書課長は「報告書が出て学術的に検証されるまで何も記述できないのか。大きく報道され世間に浸透しているという見方もできるのではないか。南京(大虐殺)などのケースと一緒にされても困る」と、検定制度が比較対象になることに当惑気味だった。

捏造がナショナル・プライドをくすぐる*1方向でなされたものでなければ「調査報告書」も出ていない知見が教科書に掲載されたとはとても思えないし、さらに言えば「大きく報道され世間に浸透」することもなかっただろう(この点で、マスメディアにも責任の一端はある)。教科書検定の政治性は必ずしも近現代史にのみみられるものではない、という事例として記憶にとどめておく価値のある発言だろう。

*1:まあそもそも“現在日本という国家を構成している地理的範囲”における前期旧石器遺跡の年代が古いほどナショナル・プライドがくすぐられる、というのも妙と言えば妙なはなしではあるのだが。