2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

私はなぜ否定論者にならなかったか?

非正統的な主張(疑似科学であれ偽史であれ)がサバイブする条件についての、good2ndさんの考察を拝見して。 (前略)しかも、否定論にとくに積極的に与しない人でも「否定説もあるようで、実際のところどうなのかよくわからない」という態度の人が少なから…

刑事犯罪に対する態度と戦争犯罪に対する態度の非対称性

これまで何度か書いてきたことですが、私は南京事件を(より一般的には戦争犯罪を)否定したり相対化したりする傾向と、刑事犯罪に関して厳罰化を要求する傾向との間に有意な相関関係があると思っています。多分、既発表の統計をあれこれあたれば相当程度実…

「あった」論と否定論の非対称性(追記あり)

土曜日以降の、私とここのブログ主氏との間のやりとりをご覧になって、「Apemanもさっさと答えてはなしを先に進めればいいのに」と思った方がおられるかもしれない。土曜日の晩から日曜日の未明にかけてあちらが書き散らしたエントリ、およびコメントをご覧…

第十軍法務部陣中日誌から推定する、中支那方面軍の「犯罪率」

南京事件否定論者はしばしば、なんの根拠もなく(あるいは日露戦争当時のエピソードを根拠に)日本軍の軍紀は極めて厳正だった、と主張する。実のところ、日中戦争当時、軍の上層部が軍紀の弛緩を問題視していたことを示す資料は枚挙にいとまがなく、また一…

「日本軍の戦死者に占める餓死者の割合」への追記

上のエントリで引用したコラムの末尾で秦郁彦が「つけくわえると、天皇を訴追しないという連合国の方針は東京裁判の開廷(46年5月)前に確定していた」と述べているのは、昭和天皇の発言が責任逃れのための粉飾ではないことを強調する目的ではないかと思…

そういえば…

最近のアメリカの戦争映画を観ていると、衛生兵の描写にけっこう重点が置かれているという印象を受ける。昔の戦争に比べて、戦傷の描写が非常に生々しくなっていることとも関係があろうし、また「アメリカ軍は戦傷者にできる限りのことをする軍隊だ」という…

日本軍の戦死者に占める餓死者の割合

数日前にブクマしておいた記事。 「現代史家・秦郁彦 東条宰相「復権」は慎重に判断を」(Sankei Web 【正論】、平成18(2006)年10月15日[日]) 〔サイパン陥落〜東条内閣崩壊から〕半年後、和平を模索しはじめた昭和天皇は個別に重臣を呼んで収拾策を尋ねた…

plummetさんへ

ブクマコメントより。 (前略)が、どうも否定派も肯定、というか「積極的否定論批判派」も、なんかツボを外しまくってるような気がしなくもない。肝心なのは何だ?_ 具体的なご指摘がないんであれなんですが、レイシズムと陰謀論で結論を固め、しかも平気…

カジュアル否定論

質問されたからコメント書いたのに、承認してくれないんでこっちのエントリで返事をした件だが、コメントをごっそり削除していた。こういう小さな「歴史」でもしっかり修正なさるわけだ。 また別件で、このブログでは言及していなかったこちらでもコメント削…

これはひどい…

相手方のコメント欄だけでひっそりやるつもりだったんだけど、あまりにもモノスゴイので。 http://blog.goo.ne.jp/ojisannsama/e/340edb8d24cecc7c2eb95b44a89f333a http://blog.goo.ne.jp/ojisannsama/e/2650cb6b280ac0abb9c58c4249d74d35 http://blog.goo.…

刑事事件の証拠評価と歴史学の証拠評価

ネット上の南京事件否定論に共通する一つの特徴は、南京事件に関してきわめて厳しい証拠評価基準を掲げることである。同じ基準をあらゆる歴史的出来事に適用するなら、ほとんどの歴史的出来事について「あったかなかったか不明」と言ってしまえそうなほどで…

コメント補完

たけぞーさんとおっしゃる方のブログにコメントさせていただきお返事も頂戴したのですが、その後コメントが書き込めなくなっています。私の「ご意見」をお尋ねだったのでお返事させていただき、その後投稿したコメントが表示されない旨コメントしたのですが…

江口圭一、「上海戦と南京進撃戦―南京大虐殺の序章」

古書店で入手した『南京大虐殺の研究』(洞富雄・藤原彰・本多勝一編、晩聲社)に所収。江口氏の南京事件についての論考を読むのは初めて。 このエントリで紹介したNHKスペシャル「日中戦争〜なぜ戦争は拡大したのか〜」を観ていてちょっと不可解だったのは…

東潮ライブラリィ、「史実記録」シリーズ

映画を観にいったついでに寄った古本屋での収穫。東潮社刊、坂邦康編著、東潮ライブラリィ「史実記録 戦争裁判○○法廷」シリーズの4冊を入手。昭和42年から43年にかけて刊行された新書サイズの本である。表紙はご覧の通り。 裏表紙には「ミゾリィ艦上の降伏文…

雑感

加速度的に「どうでもよい」度合いを高めておりますが…まあ、なにしろ相手が南京事件(ホロコースト)否定論に正面切ってコミットする根性はないけど否定論を密かに応援しよう、という性根の人ですから不思議はないですが。 まぁあまり昔(といってもここ1…

歴史的事実へのコミットメント

「中国語がわからないと…」とか「ドイツ語がわからないと…」といったことをこの人が言い出すのは別に今回が初めてじゃないんですが、この種の言い訳のおかしなところは「中国語(ドイツ語)がわかる」にも程度問題があるし、「南京事件(ホロコースト)につ…

本当の争点は何か

このエントリの主題からはずれるけど南京事件に関してはより本質的な点についてまず。そもそもティンパリーと国民党のつながりを云々…というのは南京事件否定論者がどれだけ追いつめられてるか、の証左なんですな。なにしろティンパリーは南京事件当時南京に…

こりゃ便利な方法だ

やはり中国語がわからないと「南京大虐殺」について語るのは難しいだろうと思った件 私はロシア語が読めないので(いや昔ちょっと勉強しようと思って辞書だけはいいのを買ったんだけど(w )シベリア抑留について語るのは難しいだろうし、アラビア語(スーダ…

フィリピン・ミンダナオ島での生体解剖

mixiの「mixiニュース」で見つけた毎日新聞の報道なのだが、いま現在MSN毎日インタラクティブには掲載されていないようで、mixi以外のオンラインソースを確認次第追記する。 <生体解剖>フィリピンでも 大戦末期 元衛生兵が証言 (毎日新聞 - 10月19日 03:21)…

従軍慰安夫

吉田裕の『現代歴史学と戦争責任』(青木書店)を読んでいたら、田中利幸の「なぜ米軍は従軍慰安婦問題を無視したのか」(上・下、『世界』、1996年10月、11月号)が紹介されていた。 また、田中は別の論考のなかで、第二次世界大戦中の米軍の「管理売春」制…

大江志乃夫、『日本の参謀本部』、中公新書

この本は昨年買って読みはじめたところで、電車のなかに置き忘れてなくしてしまった…という経緯があり、なにしろ700番台の新書なのでなかなか店頭で見つけられず、普段の習慣に反して通販で買ってようやく読み終えた。 いまさら紹介するまでもない名著なので…

『徹底検証◎昭和天皇「独白録」』

『近代とホロコースト』についてのエントリがちっとも進展しないではないか、とお怒りの読者が(少なくとも)約一名おられると思うのだが、その一名には別件で些少ながら貸しをつくっているのでご容赦いただくことにして、またしても寄り道エントリ。 1990年…

奥宮正武、『私の見た南京事件』、PHP

以前からさがしていたのだが、1997年刊行というのにすでに古書でしか手に入らなくなっているので、ちょっと時間がかかった。 実のところ、奥宮氏自身の見聞が綴られているのは第一章「私の支那事変参戦記」のみで、第三章、第四章ではハーグ陸戦規則やジュネ…

一兵士が写した戦場の記録

dempaxさんからご教示いただいた、『新版 私の従軍中国戦線 村瀬守保写真集 <一兵士が写した戦場の記録>』(機関紙出版)を購入しました。村瀬氏は従軍カメラマンではなく、趣味のカメラをもって出征し中隊の記念写真を撮っているうちに、半ば公認の「中隊…

「国内法的には戦争犯罪人ではない」って…

この記事などが伝える安倍晋三の国会答弁。そりゃあ「戦争犯罪」ってのが(ハーグ条約、ジュネーヴ条約などをはじめとする)国際条約への違反のことを意味しているなら、そもそも「国内法的な戦争犯罪」なんて存在しないでしょ。まあ「戦争」を取っ払って「…

昨日のエントリに補足

旧日本軍(大日本帝国)の否定的な側面、という場合に「悪かった」ということと「駄目だった」ということを分けることができる(宮台真司による)。二つの側面は互いに無関係ではなく、例えば南京事件は国際社会に報道され、アメリカの対日世論を悪化させた…

「身内」の罪

今朝の朝日新聞朝刊国際面に、トルコのEU加盟をめぐる記事が掲載されている。フランスのシラク大統領が「アルメニア人に対する民族虐殺を認めること」をEU加盟の条件として考えていると発言した、とされている。トルコに対しては先日ドイツのメルケル首相も…

「自虐一色に染まる」っていったいなんのことなのか、意味が分からない

noharaさんの9月29日付エントリを青狐さん経由で今日読んで、少しコメントさせていただいたのだが、それとは別の件について。そのエントリで言及されているnoharaさんの05年7月24日のエントリへのコメント。 (前略) 最近「あの当時の戦争を」議論している…

「もしも」のはなし

bat99さんの「bat99の日記」より。 横浜裁判に限らず、BC級戦犯裁判全体について色々と問題はあったことは事実だと思う。だが、裁判などせず日本人に直接復讐したいと思った人間は数多くいた。裁判という形式を取り無秩序な復讐を良しとしなかったことは評価…

安倍首相の答弁を擁護してみよう

くさすばかりでは芸がないのでたまには擁護してみようかな、と。 A級戦犯の戦争責任、政府断定は不適当…首相答弁 安倍首相は2日午後の衆院本会議で、首相就任後初の各党代表質問に対する答弁を行った。 首相は、昭和戦争に関するA級戦犯の戦争責任につい…