文献紹介
-上丸洋一『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』、朝日新聞出版、2023年 publications.asahi.com 元『朝日新聞記者』の上丸洋一氏が先月刊行したのがこの『南京事件と新聞報道』。いかにも元新聞記者らしく、当時の新聞報道をひろ…
-水野直樹・藤永壯・駒込武『日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する』、岩波ブックレット No.552、2001/2023 『日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する』水野直樹/藤永壮/駒込武 編(岩波ブックレット)重版分が入荷しました。大好評『検証 ナチスは…
アジア・太平洋戦争関連の(「アジア・太平洋戦争」という表記を用いることは稀ですが)コンテンツがピークを迎える8月15日が過ぎました。まだ「ひと通り見ただけ」の番組も少なくありませんが、期待外れと期待以上の番組について簡単な感想をば。 放送日程…
著作権が消滅した資料をデジタル化して利用可能にする国立国会図書館の「デジタルコレクション」が近年大幅に拡充されたことはご存じの方も多いかと思います。国会図書館に出向かなくても自宅から閲覧できる資料が増え(利用者アカウントは必要なケースが多…
さる6月12日、毎日新聞はかねてから準備中で2025年の完成を目指している「戦中写真アーカイブ』の特設サイトを公開しました。 mainichi.jp 戦場写真はきわめて訴求力が強くSNSでも出所や真贋が怪しいものを含め多くが流通しています。そのため歴史修正主義の…
今年は通州事件と題する書籍が2冊(歴史修正主義者によるものを除いて)刊行されました。 -広中一成『増補改訂版 通州事件』、志学社、2022年7月 -笠原十九司『通州事件 憎しみの連鎖を絶つ』、高文研、2022年9月 広中版『通州事件』は2016年に星海社新書と…
昨年11月にBS1スペシャルとして放送された「「幸せなら手をたたこう〜名曲誕生の知られざる物語〜」。 www.nhk.jp これはもともと2016年に放送された番組だそうですが、これが去る2月14日、15日にBSプレミアムの「プレミアムカフェ」枠で再放送されました。…
「八月ジャーナリズム」という言葉がありますが、月刊誌『世界』(岩波書店)の8月号は普段よりもアジア太平洋戦争に多くのページを割いていました。 まずは倉沢愛子さんの「それは日本軍の人体実験だったのか? インドネシア破傷風ワクチン“謀略”事件の謎」…
『帝銀事件と日本の秘密戦』(新日本出版社)の著者、山田朗さんによる同名のオンライン講演会が開催されます。 www.meiji.ac.jp ふつうであれば首都圏で開催されたであろう講演会を上京せずとも視聴できるのは、コロナ禍のせめてもの救いといったところでし…
『歴史評論』(歴史科学評議会)の2021年5月号が「ひとびとの歴史意識に向き合い、疑問に答える」と題する特集を組んでいます。歴史科学評議会はラムザイヤーの日本軍「慰安婦」問題否定論を批判した「新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日…
-小林太郎(笠原十九司、吉田裕編・解説)『中国戦線、ある日本人兵士の日記 1937年8月〜1939年8月 侵略と加害の日常』、新日本出版社、2021年2月 bit.ly 2015年10月4日号の『しんぶん赤旗 日曜版』に「遺族が公開 虐殺生々しく 上等兵の日誌」と出して報じ…
日本軍「慰安婦」問題や「徴用工」問題に関しては、日本の右派メディアが積極的に主張を展開する一方、それに対する反論を主流メディアがほとんどとりあげない状態が続いています。李栄薫(編著)『反日種族主義』(文藝春秋)についても同様です。日本の右…
ちゃんととりあげなければ、と思いつつ先延ばしにしているのが李栄薫らの『反日種族主義』(文藝春秋)です。とはいえ、先延ばしにしている最大の理由は、同書の内容に目新しいところがないことであり、単に内容だけを問題にするならば改めて批判するまでも…
まずは前回の『ノモンハン 責任なき戦い』同様に NHK スペシャルをベースにした大森隆之『特攻の真実 なぜ、誰も止められなかったのか』(幻冬舎文庫、2018年)。番組タイトルは「特攻 なぜ拡大したのか」(2015年8月8日放送)。 まず言っておかねばならない…
2018年に放送された NHK スペシャル『ノモンハン 責任なき戦い』を講談社現代新書で書籍化したもの。 本を読むにあたって番組を見直すことはしなかったので放送で使われていたかどうか記憶がはっきりしないが、引用されている辻政信の回想に次のようなものが…
先日ご紹介した山岡鉄秀に加えて、ケント・ギルバートが『正論』の6月号で負け惜しみを書いています。とるに足らない内容ですが、「性奴隷の定義がどんどん勝手に広げられていく」と「かつてのGHQの「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」のよ…
岩波書店の月刊誌『世界』の2019年2月号では第2特集として「戦争の記憶と向き合い続ける」が掲載されています。 ・裁かれた者の「記憶」と「記録」(内海愛子) ・強制労働問題の和解への道すじ――花岡,西松,三菱マテリアルの事例に学ぶ(内田雅敏) ・戦後…
-リチャード・ベッセル、『ナチスの戦争1918-1949 民族と人種の戦い』、中公新書(ナチスの戦争1918-1949|新書|中央公論新社) しばらく前に全4章のうち3章まで読んだところで電車内に置き忘れてしまい戻ってこなかったので長らく中断していたのだが、先日…
去る1月15日から週末を挟んで21日まで、『朝日新聞』夕刊紙上で全5回の連載「東学農民戦争をたどって」が掲載されました。担当は『『諸君!』『正論』の研究』の上丸洋一記者です。 (東学農民戦争をたどって:1)民衆抵抗の地、初対面で涙:朝日新聞デジタ…
NHK BS1 BS世界のドキュメンタリー 2018年4月24日(火)午前0時00分〜 「ヒトラーは“ジャンキー”?」 ヒトラーの主治医モレルの日誌には、ナチス総統が薬物を常用し麻薬の依存症に陥っていく過程が記録されていた! ナチス・ドイツの“暴走”は、麻薬によって…
NHK Eテレ 2018年3月19日(月)午後10時25分〜10時50分(再放送:2018年3月21日(水)午前5時30分〜5時55分/2018年3月21日(水)午後0時00分〜0時25分) 「100分de名著 松本清張スペシャル 第3回 歴史の裏側を暴き出す 〜「昭和史発掘」〜」 昭和初期の時代…
吉田裕『日本軍兵士――アジア・太平洋戦争の現実』、中公新書、2017年 同じ著者による『日本の軍隊――兵士たちの近代史』(岩波新書)や著者の指導教官だった故・藤原彰の『餓死した英霊たち』(青木書店)の延長線上に位置づけることのできる研究だと思うが、…
笠原十九司さんの『日中戦争全史』上下巻が増刷を重ねているそうで、主要メディアがほとんど「日中戦争勃発八十年」という事実にライトを当てないなか、数少ない良い知らせだと思います。 さて、立ち回り先の図書館に所蔵されていないためなかなか参照する機…
〜高まる核の脅威の中で〜」 NNNドキュメント'17 2017年9月10日(日) 24:55〜 「なぜアメリカ人はヒロシマに?〜高まる核の脅威の中で〜」 アメリカ・トランプ大統領誕生。北朝鮮の核開発。原爆投下から72年...。核の脅威はかつてないほど高まっている。世界…
ある日あなたの家――農家であったと仮定しよう――に突然外国人がやってきて、「今日からもうサトウキビは植えつけなくてもいい」「ゴムのタッピング(樹液採集)もしなくていい」「若い衆は、こんなところで農業をやっていないで、○○の飛行場建設現場で働けば…
山田朗『兵士たちの戦場―体験と記憶の歴史化』、岩波書店(シリーズ:戦争の経験を問う)、2015年 「日本社会全体として〈戦争の記憶〉の希薄化が進展している」ことを踏まえた「継承すべき〈記憶〉の再構成と歴史化」の試み。具体的には800点を超える戦争体…
山田朗、『昭和天皇の戦争―「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』、岩波書店、2017年1月 昭和天皇の政治や統帥への関与については、著者にはすでに『昭和天皇の軍事思想と戦略』(校倉書房)などの著書があり、著者自身断っているように内容的には…
お読みになっている方もおられることと思いますが、『読売新聞』の連載「時代の証言者」で去る㋂14日から秦郁彦氏が取り上げられています。相変わらず「慰安婦」問題についてはアレですが、旧軍関係者に聞き取りをしていた時のエピソードなどはなかなか興味…
麻田雅文、『シベリア出兵―近代日本の忘れられた七年戦争』、中公新書 日本の近代史に占める重要性に比して知られることの少ないシベリア出兵についての、近年の研究成果が新書で紹介される意義はきわめて大きいものと思われる。終章で著者が指摘している日…
明日は二・二六事件から81年目の日となりますが、NHK総合では1979年のNHK特集「戒厳指令“交信ヲ傍受セヨ”〜二・二六事件秘録〜」をNHKアーカイブス枠で放送します。 2017年2月26日 午後1時50分〜 午後3時00分 NHKアーカイブス「二・二六事件の実像〜近代日本…