『世界』19年2月号

岩波書店の月刊誌『世界』の2019年2月号では第2特集として「戦争の記憶と向き合い続ける」が掲載されています。

・裁かれた者の「記憶」と「記録」(内海愛子

・強制労働問題の和解への道すじ――花岡,西松,三菱マテリアルの事例に学ぶ(内田雅敏)

・戦後補償管見――記憶の承継と和解(新村正人)

慰安婦問題の隘路をどう進むか(吳泰奎)

チビチリガマを「壊す」と「作る」(下嶋哲朗)
・憎しみの連鎖を断ち切る――通州事件犠牲者姉妹の証言(笠原十九司

とりあげられている題材については、よく目配りされていると思います。問題はウヨ雑誌がほとんど毎号のように歴史修正主義的な記事を載せているのに対して、『世界』が何年かに一度こういう特集を組んだ程度では、量的にまったく対抗できないということですね。

また内田雅敏弁護士については、「花岡和解」を当事者の意向を軽視して進めたという批判もあり、ほかならぬ『世界』誌上で検証記事がでたことがあります。

興味深かったのは、笠原十九司さんによる通州事件生存者、および当時日本にいて難を逃れた姉への聞き取りが実現したきっかけが、『日中戦争全史』を読んだお姉さんから笠原さんに手紙が来たことだ、という経緯です。自分の個人史を日本の近現代史の中に位置づけて理解したい、しなければならない、という思いだったのでしょう。