ブックレット『日本の植民地支配』

-水野直樹・藤永壯・駒込武『日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する』、岩波ブックレット No.552、2001/2023

上記ツイートにもあるように、『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』がベストセラーになったのをきっかけに増刷されることになったブックレット。とりあげられている項目をみると刊行から20年以上たってもなお右派が同じことばかり繰り返していることがよくわかる。表面的には「軍艦島」などへの言及が増えるといった変化はあっても、認識の歪み方は変わっていない。

さて『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』については具体的項目についての検証もさることながら、「はじめに」の序論的な議論――歴史認識における〈事実〉〈解釈〉〈意見〉という3つの層に関する議論が多くの読者に強い印象を与えたようだ。

この『日本の植民地支配』についても「はじめに」で重要なメッセージが発せられている。

 肯定・賛美論が例外なく「歯切れのよい」論調であるのに対して、本書には「歯切れの悪い」内容が含まれているかもしれない。しかし、歴史的事実には多面的な性格があり、歴史の真実に忠実であろうとすれば、ある種の「歯切れの悪さ」を抱え込まざるを得ないということを私たちは大切にしたいと思う。(後略)

歴史修正主義を克服するためには、私たち読者の側にもこの「歯切れの悪さ」に耐えることが求められているのではないだろうか。