『シベリア出兵』

日本の近代史に占める重要性に比して知られることの少ないシベリア出兵についての、近年の研究成果が新書で紹介される意義はきわめて大きいものと思われる。終章で著者が指摘している日中戦争との類似性(と相違)は非常に示唆的で、私自身もシベリア出兵への関心を新たにした。
ただ、「当時の日本人すべてを断罪するような勧善懲悪の史観では、歴史の一面を照らすだけである」(249ページ)などという主張はかなり違和感がある。「当時の日本」のすべてを美化しようとする政治運動は猖獗を極めているのに対して、「当時の日本人すべてを断罪するような勧善懲悪の史観」なんてどこでお目にかかれるのだろうか? 著者は1980年代生まれとのことだが、この世代の近現代史研究者にこんな藁人形が刷り込まれているのだとするとちょっと今後が心配である。


なお、当ブログのシベリア出兵に関連するエントリとしては次の2つがある。
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20070106/p1
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20070114/p2