『ナチスの戦争』

-リチャード・ベッセル、『ナチスの戦争1918-1949 民族と人種の戦い』、中公新書ナチスの戦争1918-1949|新書|中央公論新社

しばらく前に全4章のうち3章まで読んだところで電車内に置き忘れてしまい戻ってこなかったので長らく中断していたのだが、先日図書館で借りて最終章を読了。

タイトルが示す通り第二次世界大戦の前史としての戦間期から、戦争が戦後初期に及ぼした「余波」までを扱っている。新書とはいえ膨大な注も収録されているので、ナチス・ドイツの戦争の全体像を知る入門書としても、研究の蓄積(の一部)を知るのにも役立ちそう。

とりわけ興味深いのが「戦後」を扱った第4章。非ナチ化の不徹底(とりわけ西ドイツで)、戦争末期の経験からくる被害者意識、にもかかわらず掌を返すようにナチ・イデオロギーへの支持が消え去ったこと(と同時に存続した反ユダヤ主義)……と、日本の戦後と比較可能なところが多々あるのがわかる。

ではなぜいまはここまで差がついたのか? というのは本書の課題ではなくわれわれの課題だが、やはり「68年」を考え直すのが第一歩ということになるのだろう。