文献紹介

久々の「七平メソッド」解説

『日本人とユダヤ人』(以下、引用の出典は角川文庫版のページ数のみを示す)の第十二章は「しのびよる日本人への迫害」というおどろおどろしいタイトルがつけられており、さすが反共デマゴーグだけあって「中韓の反日包囲網がっ!」とか「マスゴミは在日に…

『戦場体験者 沈黙の記録』

保阪正康、『戦場体験者 沈黙の記録』、筑摩書房、2015年7月 筑摩書房のPR誌『ちくま』での連載をまとめたもの。著者が聞き取りをしてきた旧軍関係者の証言を紹介しつつ、それらが戦後の日本社会で公にはほとんど語られなかった、という意味での「沈黙」の意…

ユネスコに申請された「南京大虐殺」記録に関する解説

現在発売中の『世界』(岩波書店)2016年1月号で、笠原十九司さんによる「国際社会に歴史修正主義は通用しない ユネスコ世界記憶遺産登録の実相」が掲載されています。中国が登録申請(厳密には「申請」ではなく「推薦」とすべきとのこと)した資料のリスト…

『海軍の日中戦争』

笠原十九司、『海軍の日中戦争 アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ』、平凡社、2015年6月 目次などの情報はこちらをご覧ください。 1997年に刊行された『日中全面戦争と海軍―パナイ号事件の真相』の続編ともいうべき笠原十九司さんの新著。本書でもパナイ号…

『ヒトラーとナチ・ドイツ』

石田勇治、『ヒトラーとナチ・ドイツ』、講談社現代新書 全7章中2章がユダヤ人迫害およびホロコーストに割かれているが、全体としてはむしろホロコーストに至るまでの、ナチ体制が確立するまでの歴史について近年の研究成果を含めて紹介したものとなっている…

『昭和陸軍全史1〜3』

川田稔、『昭和陸軍全史1 満州事変』/『昭和陸軍全史2 日中戦争』/『昭和陸軍全史3 太平洋戦争』、講談社現代新書 第1巻が昨年7月に出て、今年の6月に完結した3巻シリーズ。タイトルに「全史」とあるが、3巻本とはいえなにぶん新書版なので、第1巻は永田鉄…

『日清戦争』

大谷正、『日清戦争 近代日本初の対外戦争の実像』、中公新書、2014年 日清戦争について知りたい、という人がいたらためらうことなくまずこれを薦めたい、という良書です。清との戦争の影で進んでいた朝鮮半島支配などについてもきちんと目配りされています…

『ニュルンベルク裁判』

アンネッテ・ヴァインケ、『ニュルンベルク裁判 ナチ・ドイツはどのように裁かれたのか』、中公新書、2015年4月 本格的な研究書ではなく入門書。なので国際軍事法廷についての部分は、ある程度予備知識のある人々にとってそれほど目新しい情報を含んでいない…

『朝鮮王公族』

新庄道彦氏の『朝鮮王公族』(中公新書、2015年3月)を読了。植民地支配が生んだ存在が朝鮮王公族だが、私も含めて大方の日本人はせいぜい梨本宮方子の婚姻を思い浮かべるくらいの知識しかないのではなかろうか。 本書は大韓帝国サイド(あるいは王公族の)…

「9条を抱きしめて〜元米海兵隊員が語る戦争と平和〜」

NNNドキュメント'15 5月3日(日) 「9条を抱きしめて〜元米海兵隊員が語る戦争と平和〜」(55分枠) 戦後70年、日本は国家として他国民を誰一人殺さず、また殺されもしなかった。非戦を貫けたのは、戦争の放棄を定めた憲法9条があったからにほかならない。戦…

「抗日掃討」記録写真、続報

一昨年、旧日本軍による「抗日掃討」作戦の模様をとらえた写真が公表された件を取り上げました。 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20130814/p1 http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20130922/p1 書籍化の予定があるとこの写真を取り上げた「報道特集」では述べられて…

『日本軍と日本兵』

一ノ瀬俊也、『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』、講談社現代新書 2012年に出た同じ著者の『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』とアプローチや問題関心は基本的に同じ。ただし重点の置きどころは多少異なる(例えば、日本軍が…

『戦争はどう記憶されるのか』

上記エントリに関連した情報です。 伊香俊哉、『戦争はどう記憶されるのか―日中両国の共鳴と相克』、柏書房、2014年 撫順・太原の戦犯管理所及びそこでの「認罪教育」について書かれた日本語の文献はいくつかありますが、今年の2月に出たこの本の第四章「戦…

「ホロコーストをどう読むか」

ロバート・イーグルストン(聞き手:鵜飼哲)、「ホロコーストをどう読むか―『ホロコーストとポストモダン』をめぐって」、『みすず』、2013年12月号 『ホロコーストとポストモダン』、『ポストモダニズムとホロコーストの否定』などの邦訳書があるR・イーグ…

『捏造される歴史』

ロナルド・フリッツェ、『捏造される歴史』、原書房、2012年 タイトルだけ見てとりあえず借りてきたのだが、扱われているのは古代史にまつわる偽史の事例が中心で、ちょっと私の関心からはズレていた。とはいえ、「疑似歴史家」が「可能性と蓋然性の違いをあ…

朝鮮人虐殺の原点としての甲午農民軍「討伐」

window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platform.twitter.com/widgets.js"; fjs.paren…

『戦争社会学ブックガイド』

http://www1.e-hon.ne.jp/content/toshoshimbun_2013_syohyou_3125_1-1.html ↑での『戦争社会学の構想』の紹介を読んで、同書の編者のうち2人が編者となった本を借りてきました。 野上元・福間良明編、『戦争社会学ブックガイド―現代世界を読み解く132冊』、…

『日本は過去とどう向き合ってきたか』

山田朗、『日本は過去とどう向き合ってきたか 〈河野・村山・宮沢〉談話と靖国問題を考える』、高文研 近代日本の軍事史の専門家による、歴史修正主義批判の入門書。I章〜IV章のタイトルは次の通り。 I 〈河野・村山・宮沢〉歴史認識三談話をめぐって──政界…

『フィリピンBC級戦犯裁判』

永井均、『フィリピンBC級戦犯裁判』、講談社選書メチエ、2013年 著者が岩波から2010年に刊行した『フィリピンと対日戦犯裁判』の方は未読。ゆえに本書が岩波本の一般向け簡略版なのか、それとも新たな観点や問題意識が加えられているのかについてはいまのと…

『戦場の軍法会議』

先日、旧陸軍の軍法会議の記録が新たに発見された、ということがNHKで報道されておりました。 NHK NEWS Web 2013年8月8日 「旧陸軍の軍法会議の記録発見」(魚拓) 焼かれるなどしてほとんど残されていないという戦時中の軍法会議の記録が見つかり、専門家は…

写真集『重重』刊行

昨年の6月26日は、新宿ニコンサロンにおいて写真家・安世鴻さんの写真展が開かれるはずでした。しかしご承知の通り、ニコン側からオファーがあったにもかかわらずニコンは開催中止を通告、その後東京地裁が安さんに対して施設(ニコンサロン)の使用を許諾す…

「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その12

吉見義明、「【資料紹介】第三五師団司令部「営外施設規定」」、『季刊 戦争責任研究』、第80号(2013年夏号)、pp.55-57 史料名でピンときた方もおられると思いますが、scopedog さんが発掘された史料が『季刊 戦争責任研究』の最新号に掲載されております…

『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」』

一ノ瀬俊也、『米軍が恐れた「卑怯な日本軍」 帝国陸軍戦法マニュアルのすべて』、文藝春秋 ジョン・ダワーの『容赦なき戦争』などが分析対象とした「戦争下の日米が相互に抱いたイメージとその作られ方」という問題に、「戦法(マニュアル)」という観点か…

『「村山・河野談話」見直しの錯誤』ほか

吉見義明さんの岩波新書、『従軍慰安婦』は刊行から20年近く経った今でも、この問題についての基本的な理解を形成するうえで有益な文献だとは思います。とはいっても、なにかあったらすぐこの本、というのではその後の約20年間に行なわれてきた調査、研究へ…

「東京裁判と特高警察」

荻野富士夫、「東京裁判と特高警察 不処罰の理由を追う」、『世界』(岩波書店)、2013年2月号 対日戦犯裁判では対独裁判に比べ「人道に対する罪」の追及が事実上なされなかったことは、当ブログの読者の方であればすでにご存知のことだろう。もし連合国が東…

『陰謀史観』

秦郁彦、『陰謀史観』、新潮新書 分析の対象となっているのは「明治維新に始まる近代日本の急速な発展ぶりが生みだした陰謀史観」(11ページ)なので、田中上奏文やバーガミニ(本書では「バーガミーニ」)の著作などにも言及があるが、意図してであれ結果と…

『朝鮮人強制連行』

外村大、『朝鮮人強制連行』、岩波新書(1358) 昨年の3月に出た本だが、遅ればせながら読了。 著者のことばでは「朝鮮人労務動員」に絞った研究であり軍事動員(「慰安婦」を含む)についてはほとんど触れていないが、他方で著者自身「日本という国家の抱え…

『記録 沖縄「集団自決」裁判』

岩波書店編、『記録 沖縄「集団自決」裁判』、岩波書店 今年2月刊。月刊誌『世界』に掲載されたものを含む論考、インタビューが第I部、被告弁護団による「裁判の経過・争点・判決・立証活動等」が第II部という構成。資料として陳述書や法廷証言(の要点)が…

『日中歴史認識』その後

服部龍二、『日中歴史認識 「田中上奏文」をめぐる相克 一九二七―二〇一〇』、東京大学出版会 先日読了。やはり「情報戦」という概念を軸として「田中上奏文」を考えようとするアプローチに違和感を覚える。曰く「「田中上奏文」に教訓があるとするなら、そ…

『日中歴史認識』途中報告

服部龍二、『日中歴史認識 「田中上奏文」をめぐる相克 一九二七―二〇一〇』、東京大学出版会 こちらのエントリのコメント欄で話題になった上記の本を図書館で借り、満洲事変〜国際連盟脱退までのところ(第2章まで)を読了。 「さかのぼり日本史」ともっと…