『ニュルンベルク裁判』
本格的な研究書ではなく入門書。なので国際軍事法廷についての部分は、ある程度予備知識のある人々にとってそれほど目新しい情報を含んでいないかもしれない。むしろニュルンベルク継続裁判と、戦犯裁判が敗戦後間もないドイツでどのように受容されたか(あるいは受容され損なったか)について書かれた第3章以降が本書の値打ちだろう。
日本では「ニーメラーの警句」でおなじみのマルティン・ニーメラーは本書では、「非ナチ化への『受動的抵抗』を牧師たちに呼びかけ」た人物として登場する(163ページ)。ニーメラーが関わった「シュトゥットガルト罪責宣言」についても批判的な眼差しが向けられている。1950年代までのドイツの戦争責任認識は同時期の日本と似たり寄ったりに思われ、それだけに60年代末以降の違い(ただしその時期は本書ではカバーされていない)が一層際立つ。