『捏造される歴史』

  • ロナルド・フリッツェ、『捏造される歴史』、原書房、2012年

タイトルだけ見てとりあえず借りてきたのだが、扱われているのは古代史にまつわる偽史の事例が中心で、ちょっと私の関心からはズレていた。とはいえ、「疑似歴史家」が「可能性と蓋然性の違いをあいまいにして自説を主張する傾向」をもつという指摘、「あるできごとが起きる確率を問わない可能性と、あるできごとが起きる確率がきわめて高いと見る蓋然性には明確な違いがある」という指摘などは、近現代史をめぐる日本の歴史修正主義にあてはめてもうなずけるものだ。
本書の、ある意味での読みどころは「解説」にある。「今の日本でも天皇家があって、そのベースには日本書紀の神話がある。幸い、日本ではそれを歴史的事実だと言い張る人は(あまり)」いない」などと書くだけで、南京事件否定論の存在になど触れもしない! 書いたのは誰かって? 山形浩生ですがな。