『朝鮮王公族』
新庄道彦氏の『朝鮮王公族』(中公新書、2015年3月)を読了。植民地支配が生んだ存在が朝鮮王公族だが、私も含めて大方の日本人はせいぜい梨本宮方子の婚姻を思い浮かべるくらいの知識しかないのではなかろうか。
本書は大韓帝国サイド(あるいは王公族の)対日妥協的な選択の背景には「社稷重しと為す」という発想があったと指摘する(25ページ、44ページなど)。これを読んで私が連想したのは、ポツダム宣言受諾〜占領期における日本の支配層もまた、事実上のアメリカの支配の下で「社稷」だけは守ろうとしたと解釈できるのではないか、ということ。朝鮮王公族と敗戦後の皇室とを比較することは、植民地支配を「恩恵」としながらアメリカの占領期改革を「押し付け」とする日本の右派のダブスタをより一層明確にする手段たり得るのではないだろうか。