『朝鮮人強制連行』

昨年の3月に出た本だが、遅ればせながら読了。
著者のことばでは「朝鮮人労務動員」に絞った研究であり軍事動員(「慰安婦」を含む)についてはほとんど触れていないが、他方で著者自身「日本という国家の抱えていた問題性や朝鮮に対する植民地支配の特質について把握することにもつながっている」(10ページ)と自負しているように、単なる労務動員史ではなくアジア・太平洋戦争期の日本をトータルに理解するうえで非常に示唆的である。
なお数少ない軍「慰安婦」への言及として、女子徴用への日本政府の否定的な態度が内地のみならず朝鮮半島でも一貫していたことにつき、「これ〔=性的分業を否定するという懸念〕に加えて民衆の間で軍慰安婦についての噂が広まっていたことへの懸念も関係していた」(182ページ)というものがある。戦後における「慰安婦」認識の形成とのつながりなど、気になるところである。