『兵士たちの戦場』

  • 山田朗『兵士たちの戦場―体験と記憶の歴史化』、岩波書店(シリーズ:戦争の経験を問う)、2015年

「日本社会全体として〈戦争の記憶〉の希薄化が進展している」ことを踏まえた「継承すべき〈記憶〉の再構成と歴史化」の試み。具体的には800点を超える戦争体験者の回想録から、100人弱の体験、記憶をアジア・太平洋戦争の展開に沿って配置した、「点描的歴史叙述」。回想者が戦後に得た知識に依拠して書いている部分を基本的に排し、「体験者本人の体験、直接に見聞したエピソード」を用いることを原則としているので、ほとんどが戦争の全体像を知らないまま体験したことからなる、「虫瞰図的歴史叙述」となっている(最後の「 」のみ「おわりに」から、その他は「はじめに」から)。
このような方法で書かれているため、アジア・太平洋戦争について一通りのことは知っている読者向き。また、日本軍関係者の回想が素材であるため加害体験の記述も限られているが、147〜151ページあたりは中国戦線における加害の様態の一つの典型例を提供している。また、誤った戦死公報のため起きた悲劇として知られるレビレート婚の事例も一つ紹介されている(191ページ)。