「国の制度が邪悪な心に変える」

 米国務省が発表した今年の報告書で、人身売買と闘う「ヒーロー」に日本人で初めて選ばれ、6月にワシントンで表彰された。計4000人以上の在日外国人労働者を支援し、過酷な職場と搾取の根絶を目指す長年の活動が評価された。
(後略)

記事中では鳥井氏の「大半の雇用主は普通の人だが、国の制度が邪悪な心に変える」ということばが引用されています。これはもちろん、雇用主を免罪するものではありません。雇用主もこの社会の市民(ないしこの国の有権者)として制度の存在に責任を負っていますし、研修生・実習生を多数受け入れている業界の一員として他の市民以上の責任を制度の存在に対して負っているからです。さらに、研修制度が絶対的な与件であるような場合を仮想してみた時にも、そうした制度の下でのふるまいに対して個人の責任は問われることになります。
他方で、制度が可能にする選択肢によって個人のふるまいが大きく左右されることもまた確かなことです。旧日本軍「慰安所」制度が問題である理由の一つもここにあります。人身売買に基づく強制売春が「事実として」社会の中にあり国家がそれを消極的に容認していることと、国家がそれを正式に自らの一部として取り込むことの間には、決して無視できない違いがあるのです。