追記

“日清、日露戦争の頃に比べて皇軍軍紀は弛緩してしまった”という認識を持っていた日本人は実は少なくない。多くはそれを「日本人の道義心の低下」として理解しているのであるが、これは「品格」大好きな数学者の年賀状同様の誤謬を犯している可能性がある。軍紀の弛緩として現われた変化は、実は「命じられたことは疑わずに言われた通り実行する」メンタリティから「納得のいかない命令には従わない」メンタリティへの変化なのかもしれない。兵士の自発性に基づく軍紀維持を重視し、上官にも合理的な命令を要求する近代的な軍隊への体質転換が成功していたら、そしてなにより軍中央が目的の説明に窮するような戦争をしなければ、事情が変わっていた可能性はある。