もうそろそろ「一皮むけたオレ」を演出してシニシズムを正当化するために他人をダシにするのはやめてはどうか?

こちらのコメント欄にいただいたコメントが多数になりましたので、一部についてはこのエントリをもってお返事とさせていただき、その他についてはあちらで個別にお返事させていただくことにさせていただきます。あと、gokinozaurusu氏についてはもうテキストの読みが甘過ぎておはなしにならないので、どっかで修行してから出直すことをお薦めしておきます。現状ではあまりにも言っていることがバカバカしすぎるので相手をする気になりません(同じようにバカバカしくても「さるお方」なら相手をするメリットがこちらにもありますが、ゴキ氏の場合にはないですからね)。一例だけあげておけば十分でしょう。

gokinozaurusu 2009/01/26 23:27
id:tari-Gさん


それサヨクネトウヨに、
右翼を左翼に、白燐弾民族浄化に、
パレスチナチベットに、
イスラエルを中国に置き換えればそっくりそのまま
帰ってきますよ。

この直後に「あるく」さんがつけられたコメントが全てを言い尽くしていますけど、要はまじめにものを考えてないんですね。wiseler氏といっしょで。


さて上の引用中で言及されているtari-Gさんのコメントは“白燐弾は焼夷兵器ではない!”と主張してまわっている*1面々の「シニシズム」を指摘されたものです。PledgeCrewさんも同様なことを指摘されてます。

PledgeCrew 2009/01/27 02:52
(前略)
そもそもトロープさんが問題視されているのは、


>こんな素敵な超兵器なら一家に一台欲しいね!


このコメントにあるような、シニシズムと一種の優越感ですね。
報道に書かれていた「白リン弾は、人体に触れると高温を発し、骨を溶かすほど強力に燃え上がる兵器」という文面に対して異論があるとしても、なぜそれが「一家に一台欲しいね!」という言葉になるのでしょうか。


これは彼自身が自己の意思で積極的に表現した言葉です。
ですから、「追悼の意」を込めていないということが問題なのではありません。
ガザでの白燐弾攻撃についての報道への感想として、そこの住民が受けた被害についてはなにも触れず、どう見ても本筋を外れた、ただの「揶揄」としか思えないことを、自らの意思で、自らの判断で、積極的に表現するという行為が問題視されているわけですね。
(後略)

このシニシズムを驚くべきほどの純度でもって示しているのが、今回でいえば id:wiseler氏であるわけです。議定書IIIの立法趣旨であるとか、条文をどう解釈すれば誰のどのような利益が守られる(または損なわれる)のか、といった問題は彼の眼中にないのです。イスラエル戦争犯罪(容疑)を告発する人間はみな、数多くの人間が死傷しているという事実を出発点としているのに、そこへwiseler氏は踊り込んできて「だから私はイスラエルによる白燐弾の使用についてははじめから何も言っていません」だの「イスラエルによる白燐弾の使用と白燐弾の合法性は別の問題」だのと言い立てるわけです。事情を知らない人間がwiseler氏の発言だけを読めばきっとこう勘違いするに違いありません。豊かな国の「平和運動家」という名の好事家がイスラエル軍の武器弾薬庫を視察し、そこに白燐弾が保管されているのを発見して大騒ぎしているのだ、と。ですから、トロープさんたちが問題視した「一家に一台」発言は、少なくとも主観的には「不謹慎」でもなんでもないのです。というのもただ彼一人だけ(では実はないけど)が、多数の人間が死傷しているという現実の存在しない、おとぎの世界から発言しているのですから。
(重要な但し書き:別の解釈として、wiseler氏は議定書IIIが焼夷兵器の「使用」を規制する法であって「開発」「製造」「保持」などを禁じた法ではない……ということを理解できていない、ただの大バカもの・道化だという可能性も捨てきれません。議定書III違反を疑う見解はすべてイスラエル軍による「使用」を問題にしています。あたりまえのことですが。にもかかわらず「イスラエルによる白燐弾の使用と白燐弾の合法性は別の問題」などと的外れなことを言っているのは、そもそもなにが争点であるかを理解できていないからだ、というわけですね。)
wiseler氏に対するid:inumash氏の肩入れも結局は“似た者同士”のかばいあいですね。自分に似た者にシンパシーを感じるのは当たり前、私だってそうですから、そのこと自体をどうこう言おうとは思いません。ただ、それ以外になにかあるのかというとこれがナッシングである、というのがすごすぎる。

hokusyu 2009/01/27 02:34
いつものことながら、議論の中身ではなく抽象的な議論の「やり方」が気に食わないみたいになりつつありますね。
彼らは議論の一方の当事者が観客席とアリーナの両方にいることを使い分けられるとでも思っているのでしょうか。
まあそもそも観客席なんてありませんが。

inumash氏をみているとプロレスのレフェリーを見ているような気にもなりますね。いや最近は(というより久しく)見てないんであれですけど子どものころに見てたプロレス。ヒールの凶器とか反則とか見て見ぬ振りするじゃないですか。プロレスの場合はそれでいいんですけどね。NakanishiBさんが「東氏の騒動」に言及されていますが、要するに「オレは左翼じゃない」とか「オレは凡百の左翼じゃない」と自己アピールするためのガジェットとして「南京大虐殺論争」や「白燐弾論争」を利用する人間がいる、ってことですね。そういう風にガジェットとして利用するためには、「一家に一台」を批判されては困るわけです。「一家に一台」をネタとして軽く受け流すような人間の間でこそ「オレって左翼のデマを暴く、違いの分かる男」メソッドは通用するわけですから。
もっとも「白燐弾は焼夷兵器じゃない、は日本以外では常識」という一部のミリオタが行なったキャンペーンの化けの皮もはがれつつあるいまとなっては、先日まで「デマ、デマ」と言ってた側が責任を問われることになりますけどね。


さて、この種のシニシズムのもっとも悪質な表現は、私のように南京事件否定論に関心をもっている人間には非常に馴染みのあるものです。そう、被害者(や遺族)の証言を疑い、否定し、嗤ってみせる……というものですね。D_Amonさんもここで指摘されていますが。実際、パレスチナ人の証言は長らく国際社会で軽視され、あるいは無視されてきたのであり、イスラエルにとってパレスチナ人証言の「軽さ」は非常に重要な外交的(いや、軍事的と言ってもよい)リソースだったわけです。白燐弾が他愛のない兵器であるかのようにミスリードした者たち、白燐弾は焼夷兵器ではないとミスリードした者たちがその主観的な意図とは関係なしにイスラエルの肩を持ったことになるのは、こういう事情があるからです(この点では、堂々とイスラエルを支持している佐藤優の方が誠実です)。もちろん、次のような具合に「白燐弾を問題にすること」の意味を矮小化する試みもまた、その主観的な意図とは無関係に、パレスチナ人の置かれている状況への無関心を永続させイスラエルを側面支援する効果をもつわけです。

僕はガザ攻撃に(リアルで抗議活動に参加する程度には)反対していますが、白燐弾の件に関してはwiselerさんあるいはここでのakihanasuiさんのコメントと意見を同じにするものです。


また、イスラエル軍のオプションを奪うことが彼らの攻撃の意図を削ぎ、それに晒されているガザ(及びパレスチナ)の人々を救うことになる、とは考えていません。「白燐弾」が通常の爆弾より威力が低いことは事実ですし、その攻撃オプションを奪われても彼ら(イスラエル)は目的を達成するための行為を止めないでしょう。そして、それは結果的にガザの人々をより苛烈で残酷な攻撃に晒すことになると考えます。


実際にこれまでも「国際法違反」に該当する行為をイスラエルは重ねてきましたし、それを非難されても彼らの「我関せず」の姿勢は変わることはありません。ハマスが今回の白燐弾使用を「not illegal」だと言っている背景には、そのような苦慮があるからだと考えます。


念のため言っておきますが、僕は「白燐弾の禁止」そのものに関しては反対しません。ですが僕は白燐弾が「特別残虐な兵器である」とは考えていませんし、また上記の通りそれがパレスチナの被害を軽減させるとも考えていません。


ですから僕は(今回の件をガザに絡めるのであれば)「何だろうが殺すな(撃つな/落とすな)!」というシンプルな主張と、それを実現させるための政治的プロセスを考えることこそが重要であり、議論が「白燐弾規制」という傍流に流れる事は、その本質を損なうことになるのではないか、と考えています。
(http://d.hatena.ne.jp/rna/20090117/p1#c)

*1:自らの法解釈としてそう主張するというのならいいんですが、それが国際的に確定した法解釈であるかのように言い立てるのはそれ自体が「デマ」です。