「特集ワイド 「NNNドキュメント」清水潔さんが検証 南京事件「否定論」なぜ」

NNNドキュメントの「南京事件2 歴史修正を検証せよ」が放送されたのをうけた毎日新聞の特集記事。ちょっと見過ごせない箇所があるのでコメントしておく。

 続編は、こんなシーンで始まっていた。旧日本軍が45年8月に証拠隠滅のため焼却しようとして、焼け残った書類の映像。防衛省防衛研究所が保管しているもので、南京事件の存在を記録した文書はないが、「南京ヲ攻略スヘシ」と書かれた命令書は残っている。

南京事件の存在を記録した文書はない」とはいったいどういう意味だろうか。こんにちわたしたちが「南京事件」と認識しているような一連の出来事の総体を「南京事件」として記録している文書、が公文書の中に存在しないのはあたりまえである。日本軍がそうした文書に結実するような調査を行わなかったからだ。「南京事件」は残された史料や証言から歴史学者が再構成した過去の出来事なのだから、リアルタイムの史料がそんなものを記録しているはずがない。しかしそれをいうなら「太平洋戦争の存在を記録した文書」だって存在しないと言えてしまうだろう。他方で敗戦時の隠滅を逃れた文書はそれなりに残っている。防衛省防衛研究所が管理しているものに限定しなければ、岡村寧次やジョン・ラーベなどがかなりの規模の虐殺の「存在を記録」した文書もある。「南京事件の存在を記録した文書はない」は非常にミスリーディングな表現であろう。