「今の人身売買の被害者の苦境に光をあてるためにも」

メリーランド州議会の上院本会議で「慰安婦」決議が全会一致で可決した、とのニュースです。

提案者の議員は提案理由として「恐ろしい時代に起きたことを記憶するだけでなく、今の人身売買の被害者の苦境に光をあてるためにも、決議採択が必要だ」(強調引用者)と述べたとされています。
党派間の対立が深刻になっているアメリカの政治家たちがこのような認識で全会一致の行動を見せているときに、「アムステルダムの"飾り窓の女"というのは有名ですよね。我が東京においてもソープランドがあるのはご存知だと思いますが、こういう話題をオランダ政府が、あるいはヘッドラインで報道するとか、こういうことはないわけですね。いわば一種の常識であります」などとセックス・ワークへの偏見をむき出しにした記者会見を海外メディア相手にやからすようでは、07年に続いて右派の自爆に終わるだけでしょう。ただし海外では、のはなしですが。

「道義的責任」の成れの果て

http://blogos.com/article/108036/
https://www.youtube.com/watch?v=wy1-ckr8FIE&feature=share
無残、のひとことです。秦郁彦氏が? いやいや、大沼保昭氏のことです。アジア女性基金派が主張する「道義的責任」の内実がなんであったかが明らかになったというわけですね。

TBS Session 22 「資料から読み解く慰安婦問題」

荻上チキ氏のラジオ番組 Session 22、2月25日放送分では林博史さんと梁澄子さんが出演、河野談話以降の研究成果を中心に紹介されていました。
さて、番組で紹介された資料のうち、就労詐欺により女性を海軍慰安所に送り込もうとした業者が有罪判決を受けた大審院の判決を「ほら、悪質な業者はちゃんと取り締まっていたじゃないか」と悪用する右派が出てくるかもしれません。
しかしこの事件は1932年に起きたもので、判決も日中戦争勃発前の37年3月に下っています。この時点ではまだ「慰安所」は軍の正式な後方施設にはなっていなかったので、司法が介入することができたわけです。番組をちゃんと聞いていれば、1937年の9月以降、事態が変わっていくことが理解できるはずです。

極右が何人寄ってもアメリカ人に「理解」してもらえるための知恵なんて出ない

自民党の「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」委員会と称する事実上の「ジャパンディスカウント」特命委員会の様子が佐藤正久公式ブログで紹介されてます。
http://ameblo.jp/satomasahisa/entry-11986431344.html
ある意味、「ぜひ最後までやり通してほしい」と思います。レイシズム丸出しの発想ですから。日本の極右の実態をアメリカ人に理解してもらういい機会になるでしょう。

『朝日』は歴史修正主義者たちによる提訴で本気を出すだろうか?

http://www.sankei.com/affairs/news/150126/afr1501260037-n1.html
朝日新聞を糾す国民会議」が原告を募集していた訴訟の提起を伝える『産経新聞』の記事ですが、植村隆氏が『週刊文春』と西岡力氏を訴えた時とは随分態度が違うのは、気のせいでしょうか?
http://www.sankei.com/affairs/news/150110/afr1501100004-n1.html
きっと『朝日』に対する訴訟を「言論の自由に反している」とする社説を掲載してくれるものと思いますw


さて、この種の集団訴訟にはご承知の通り先例があります。「人間動物園」という述語を用いていた NHK スペシャルの「JAPANデビュー」シリーズの第1回、「アジアの“一等国”」に対するものです。
http://www.ch-sakura.jp/topix/1054.html
ただし大きな違いもあります。対NHK訴訟では番組で取り上げられた台湾先住民の男性の子孫を担ぎ出したのに対し、対朝日訴訟では彼女に対応するような存在が欠けている、という点です*1。対NHK訴訟の時もチャンネル桜などは「一万人訴訟だ!」と気勢をあげていたわけですが、一万人の原告の大部分は請求を棄却されています。
この前例にならうならば今回の対『朝日』訴訟も損害賠償請求が棄却されておしまいでしょうが、注目点は(1)原告がどれほど珍妙な主張をするのか、(2)『朝日』がそれに対してどこまで本気で反論するのか、です。
いわゆる歴史認識問題をめぐる訴訟では、東史朗裁判のようなケースもあるものの、概ね歴史修正主義者たちの目論見を打ち砕くような判決が出ています。右派論壇で通用しているデタラメはさすがに裁判所では通用しないからです。特に「百人斬り」訴訟では、被告側の弁護活動により両少尉に不利な証拠が発掘され、判決で事実上両少尉による「据えもの斬り」が事実認定されるという、歴史修正主義者たちにとっては痛恨の結果となりました。
今回の訴訟は被告『朝日新聞』のやる気と裁判所の判断(=どこまで「慰安婦」問題に踏み込んだ裁判にするか)次第では右派の目論見をくじく機会にできるのですが、さてどうなりますことやら。

*1:他にも NHK と違って『朝日新聞』は放送法に拘束されていない、といった違いもありますが。

「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その13

このシリーズ、久しぶりの更新です。『季刊 戦争責任研究』*1の第83号(2014年冬季号)に「河野官房長官談話(1993年8月4日)後に発見された日本軍「慰安婦」関連公文書等資料」(第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議)が掲載されています。といっても、掲載されているのは資料そのものではなく、そのリストと解説、アジア連帯会議による日本政府への提言、並びに内閣総理大臣安倍晋三に対する申入書です。河野談話後に発見された、ということは言葉を変えれば安倍内閣(第一次、第二次)が必死になって「なかったこと」にしようとしている資料群です。アジア連帯会議は昨年6月、ここに掲載されたリストに含まれる資料群を日本政府に提出しました。なんのためか? 日本政府にこれら資料群の存在を認めさせるためです。しかし日本政府は誠意ある対応を未だ見せていません。
これらの資料には、当ブログの読者の方々にはおなじみの「野戦酒保規程改正に関する件」もリストに含まれています。そう、この資料を日本政府は未だ公認していないのです。中曽根元首相が「慰安所」開設に関わったことを示す文書、scopedog さんが発掘された資料についても同様です。
では、そのリスト部分を縮小コピーしてA4一枚にまとめたものの画像をご覧に入れましょう(この雑誌の判型はA4です)。

いいですか、これは資料そのものじゃありません。そのリスト(計538点)だけでこれだけあるのです。また、「慰安婦」問題に関する全資料のリストでもありません。あくまで河野談話発表後に発見された資料のリスト、です。
(念のため:文字が読み取れないサイズにしてあるのはもちろん意図的です。あくまでその量をイメージしてもらうことだけが目的だからです。当ブログのコメント欄で「資料を出せ!」と主張する人は当然購入するか図書館で閲覧したうえ、当該資料にすべて当たってから出直すようにしてください。)

*1:現在は年2回刊になっていますが、誌名は変更されていません。

植村隆・元朝日新聞記者が西岡力らを提訴(追記あり)

ニュースについてはみなさますでにご存知だと思いますのでリンク等は省略します。
植村元記者が書いた金学順さんについての記事を特に焦点化して「朝日が慰安婦問題を捏造した」とする右派のデタラメについては当ブログでも「『池田信夫の捏造』完全版」他の記事で取り上げてきました。
今回の提訴について、右派メディアからは「なぜ言論で対抗しないのか」などといった非難が寄せられることが予想されますが、言論で対抗しても無駄なのが歴史修正主義者である、ということは当ブログの読者の方ならばよくご存知のことと思います。植村さんの提訴は直接的には植村さん及びご家族の人権を守るための戦いですが、同時に歴史修正主義者のデマゴギーに対する戦いでもあります。当然のことですが、当ブログは植村さんの提訴を全面的に支持するものです。


追記:エントリ中で「言論で対抗しても無駄なのが歴史修正主義者」と書いておいたら「エントリの内容を根拠づけるブクマがわらわらと」(Wallerstein さん)。
id:FrenetSerret じゃ、「20万人じゃない」ことを示す資料をただの一点でもいいから出してくれるかな?
id:pwd24v 「慰安婦強制連行に関する訴訟で米国最高裁で嘘だと認定され棄却」 はい、その判決出して見せてくれるかな?
id:cmuethmit 判決が出たらこのブコメを改めて晒すから、お楽しみに。