『日本の戦歴』

古本屋での収穫。毎日新聞社刊の『日本の戦歴』。1967年第1刷で私が入手したのは70年の第7刷、定価960円。帯の文句は次の通り(句読点、引用符は当ブログの慣用にあわせて変更)。

敗戦25年目に見直す真実の戦争記録!!
毎日新聞社が、軍部の焼却命令に抗し
て守り抜いた、満州事変から太平洋戦
争にいたる“15年戦争”の秘蔵写真。

この種の史料についてはこのエントリ(およびそこで言及されている別のエントリ)とコメント欄でのやりとりをご参照ください。いくつか重複している写真もあるようです。
まだパラパラとながめた程度なのだが、いくつか注目すべき点が。37年7月30日の天津での写真に「…逃げおくれた中国兵の何人かが捕虜になった」というキャプションが(撮影当時ではなく出版の際の編集部によって)つけられているのだが、写真の右下には目隠しをされ足を縛られ、(おそらく)後ろ手にしばられた死体(と思われる)が写っている。そこには検閲による×印。また同年8月9日の上海(と思われる)の写真には「…竹下部隊に捕らえられた中国正規兵」というキャプションがついているのだが、捕虜の足下にはやはり後ろ手にしばられた死体(と思われる)が写っている。いずれも明らかに戦死者でない死体(と思われる人間)が写っているのに、その点は完全にスルー。他の写真へのキャプションもあわせて判断するに、全体としては「敵味方ともよく戦った」「しかし戦争は悲惨だ」といったスタンスでの編集であるという印象を受けたが、それだけに、例えばいま現在産經新聞が同じような企画を考えたとすれば間違いなくボツにするであろうような写真が掲載されている。ガダルカナル島へ向かう輸送船内のものとされている写真に「慰安婦」が写っているものまである。ガダルカナル戦について書かれたものは多いが、慰安婦についての記述を読んだ記憶がない。果たしてどのような運命をたどったのであろうか…。


追記:エントリ中、「死体」という語にいちいち「(と思われる)」と注記したのは言うまでもなく写真では生死が判別できないからですが、常識的に考えればカメラマンも「死体」と認識して撮っていることは明白です。写真そのものを学術的な検討の対象とするにはネガか最低でもオリジナルプリントをチェックする必要があるけれども、この写真集(写真に付されたキャプション)自体、昭和40年代前半における日本人の戦争観を物語る資料になるでしょう。例えば、旧植民地や旧敵国から告発されるまでは「慰安婦」が一種の美談として認識されていた気配を感じることができます。