「ニューギニア・ビアク島 幻の絶対国防圏」ほか
NHK BShi で本日放送された「証言記録 兵士たちの戦争 「ニューギニア・ビアク島 幻の絶対国防圏」」をみました。地上波でも放送するようです。
番組案内
「絶対国防圏」の第一線、西部ニューギニア・ビアク島を死守すべく派遣された岩手県人を中心とする歩兵第222連隊。援軍もなく壊滅していった部隊の悲惨な戦場を描く。
詳細
ガダルカナル島の敗戦以降、劣勢に回った日本軍は、いわゆる「絶対国防圏」を定めた。昭和18年末、第一線の西部ニューギニア・ビアク島へ岩手県人を中心とする歩兵第222連隊3900人が派遣されるが、翌年5月、戦況悪化を理由に大本営は、島を絶対国防圏から外し、後続の部隊を送らないように命じる。元兵士たちの証言を軸に、死守すべき絶対国防圏から置き去りにされ、壊滅への道をたどった部隊の戦場を描く。
「証言記録 兵士たちの戦争」シリーズは昨年も数本が放映されたのですが、本日の「ビアク島 幻の絶対国防圏」では元下士官の比率が高く、将校(主計少尉)もひとり登場されたのが特徴的でした。弾薬・食糧の補給も当然ままなりませんから、部隊を離脱した兵士が食糧を運ぶ日本軍将兵を襲撃することもあったと証言されていましたが(同様の事例は他の戦場についても読んだことがあります)、ひょっとすると食糧不足が階級による生存率の違いを生んだのかもしれません。もちろん、日中戦争勃発期と違い大戦末期のこの時期に下士官や下級将校だった人ならまだまだ存命でも不思議ではないので、単なる偶然かもしれませんが。
ビアク島にはいまでも日米両軍の装備・兵器が錆だらけになりながらも残っていることが紹介されていましたが、改めて“全く関係のない太平洋の島々にも多大な被害を与えた”戦争だったことを感じました(人的被害のみならず、環境被害も相当なものだったでしょう)。
昨年録画して途中までみていた「取り残された民衆〜元関東軍兵士と開拓団家族の証言」*1も最後までみました。本と違って映像作品はなかなか細切れでみるというわけにはいかず(お気軽な映画ならご飯時を利用して数日かけてみる時もありますが)、ついつい「積ん録り」になってしまいがちです・・・。日本の領土内ではありませんでしたが、沖縄と並んで多数の非戦闘員が地上戦に巻き込まれた*2旧満州からの生存者への取材。当時、親を亡くした(はぐれた)子供達をみてもなにもできなかったことへの「罪滅ぼし」として中国残留孤児への支援活動をしていた女性をわざわざ呼び出して、関東軍の元参謀が“関東軍が逃げた、とあなたたちが言っているのは嘘だ”と主張し、席を勧めるでもなく関東軍の正当化にこれ努めた・・・という証言にはなんとも言えない気分になります。もちろん、開拓団をほったらかして先に「転進」したのが作戦上の要請であったということ、それ自体に嘘はないのでしょう。それでも、(1)非戦闘員にも適切に情報が伝えられていれば被害を減らすことはできたのではないか、(2)その作戦自体がすでに戦略的な意味を失っていたうえ、精鋭を南方に移動させ張り子の虎化していた当時の関東軍では戦術的にも無理筋のものでしかなかったのではないか、ということを考えたとき、やはり高級軍人には反省的な視点をもってもらいたい、そうでなくては国家の暴力装置への信頼を醸成することなど無理なのではないか、と思わされます。