「科学的合理性」と「政治判断」

 原爆投下後の広島で降った放射性物質を伴う「黒い雨」を巡り、広島市などが被爆者援護の対象となる「大雨地域」の拡大を求めている問題について、小宮山厚生労働相は31日の閣議後記者会見で、「科学的な合理性からして難しい」との見解を示した。
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 広島原爆で降った「黒い雨」の援護対象となる国の指定地域見直しで、小宮山洋子厚生労働相は31日、閣議後の記者会見で、広島市などが求めた約6倍への拡大を現時点では事実上、見送る方針を表明した。


 市などは政治判断による拡大を訴えているが、厚労省が、自ら再検討する可能性は乏しい。今後、民主党被爆者問題議員懇談会などでどれだけ働き掛けられるかが焦点となる。


 小宮山氏は、市が拡大の根拠とする2008年度の住民調査を検証した同省の有識者検討会が、拡大を否定する判断をしたのを重視。「科学的合理的に考えて範囲を広げられないという報告書を受け取っているので、拡大するのは難しい」と強調した。
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報道からは、あたかも「科学的合理性」についての判断を「政治判断」が上書きすることが求められているかのように思えてしまいます。しかし指定地域の拡大を求める人々が要求しているのは本来、厚労省の言う「科学的合理性」なるものが別の「政治判断」に従属してはいないのか? を問うことであるはずです。なにしろ、「黒い雨」に関しては、被爆から66年もたった昨年になって公表されたデータがあるくらいなのですから。今晩放送の NHKスペシャル「黒い雨〜活(い)かされなかった被爆者調査〜」が扱っているのがその「データ」です。


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http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20111122/p1