百田尚樹・NHK経営委員の捏造

広島市も説明しているように広島に投下された原爆による死者の正確な人数は判らないのですが、それにしても「一瞬にして10万人以上」という推定が蓋然性のあるものとして語られているのは聞いたことがありません(もちろん、まともな論者や機関によって、という意味)。一般財団法人高度情報科学技術研究機構が運営する「原子力百科事典ATOMICA」には次のような記述があります。

 原爆投下から数か月以内に、広島で約11.4万人(人口の33%;軍人および朝鮮半島出身の人々は含まない)、長崎で約7万人(人口の28%)の人々が死亡した。爆心地から半径2km以内の死亡総数を100%としたとき、被ばく2週間以内に88.7%が、第3から第8週までに11.3%が死亡した。半径1.2km以内での死因の内訳は、爆風による外傷が20%、放射線障害が20%、熱線と二次的な火災による熱傷が60%であった。
(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-03-10)

このデータによれば投下後2週間以内の死者がちょうど10万人くらいですから、投下後の一瞬をのぞけばその後2週間ほとんど死者が出なかったという想定でも採用しないかぎり、「一瞬にして10万人以上」はあり得ないことになります。ベストセラー作家・NHK経営委員がこの「捏造」の責任をどうとるのか、楽しみです。
なお報道によれば、広島市の原爆慰霊碑に収められている原爆死没者名簿に記載された人々の人数は今年で29万2千325人に達したとのことです。「原爆死没者」名簿と称しているものの被爆と死亡の間の因果関係についての厳格な検証がなされているわけではないこの数字を、旧日本軍「慰安婦」に関する「20万人」という推定にケチをつけずにはいられない人々(このNHK経営委員もその一人ですが)はどう考えているのでしょうか?