右派の「無能な味方」コレクション

この記事での産経の主張のマヌケっぷりはすでに複数の人によって指摘されているのですが、念のため。日本軍「慰安婦」問題否認派にとっての期待の新星マイケル・ヨン氏は「これだけの規模の調査で何も出てこないことは『20万人の女性を強制連行して性的奴隷にした』という主張が虚構であることを証明した」などと主張していますが、その「これだけの規模の調査」について「米専門家6人」は「米軍は慰安婦制度の実態への理解や注意に欠け、特に調査もせず、関連文書が存在しないこととなった」と判断しているわけです。当時の米軍が「慰安所」制度についての問題意識を欠いていたことは、例の「日本人捕虜尋問報告 第49号」にもよく現れています。報告書中には女性たちが就業詐欺によって集められていたとか、業者の搾取によって窮乏生活を送っていたという供述が含まれているにもかかわらず、業者側に都合のいい言い分も無造作に併記されているからです。
そもそも田中利幸氏が「米軍はなぜ慰安婦を無視したのか」という論文を書いたのは1996年!のことです(『世界』の同年10月号、11月号に掲載)。この問題に関心を持つ人間にとっては約20年前から分かっていたことが改めて再確認されたにすぎません。ゆえに「日本側は調査を材料に、米議会の対日非難決議や国連のクマラスワミ報告などの撤回を求めるべきだ」などという甘言に乗っかっても「嘲笑されて終わり」ならまだいい方で、「日本はまたしても歴史を否認し被害者を愚弄しようとするのか」と国際的な評判を下落させる(それこそ現在の円相場並みに)恐れが大、です。
というわけで、なにが「嘘」なのかわかったかな? ちなみに id:FrenetSerret はこの調査について勝手に「既に発見された白馬事件記録も含むだろう調査」などと妄想してますけど、スマラン事件を裁いたのはオランダだということも知らないんでしょうかね。