「歴史問題とメディア」

昨日の朝日新聞朝刊に「歴史問題とメディア 国家超える相互理解に役割」と題して、独仏合同テレビARTEの編成部長(ドイツ側)、ハンス・ローベルト・アイゼンハウアー氏へのインタビューが掲載されている。独仏両国の公共放送が共同の文化番組専門チャンネルを設立して16年。半世紀あまりの間に3度も大戦争をした両国間の「和解」が容易であったはずもなく、こうした試みの成果を過大評価も過小評価もせずに検証することは日本にとっても意義のあることだろう。歴史問題のシンポジウム(記事では具体的に言及されていないが、アイゼンハウアー氏の名前で検索すると簡単に見つかる)に出席するため来日したとのことで、記者は東アジアにおける国際公共放送の可能性についても質問している。中国のメディア状況を指摘して悲観的な見通し(日韓の方は可能性がある、と指摘)を述べているアイゼンハウアー氏の観察に異議はないが、じゃあ日本側には「準備」が整っているのかといえば…アイゼンハウアー氏によれば、第二次世界大戦中のフランスにおける対独協力者(コラボ)の問題*1アルジェリアにおけるフランス軍戦争犯罪をとりあげたときも、「論争」は起こったが「政治的な抗議」は受けなかったとのこと。もちろん、ARTEにしてもア・プリオリに政治的圧力を免れているわけではなく政治家や市民の節度、番組関係者の矜持なくしてはなりたたない営みなのだが。


追記
ARTEの公式サイト。フランス語版ドイツ語版がある。「ビデオとポッドキャスト Vidéos & Podcast」カテゴリの中に「戦争のタブー」と題する特集があり、日本についても歴史教科書問題などをめぐる状況についてのプログラムがありました。フランス語版とドイツ語版とでまったく同じコンテンツが公表されているわけではなく、例えばドイツ語版にある「ヒロシマ」についてのプログラムやドイツの敗戦時に発生したドイツ人難民に関するプログラムは、いまのところフランス語版にはないようです。

*1:これがフランスにとってどれくらいの恥部であるかについては、たまたま buyobuyo さんがエントリを書かれたばかり。