米下院、奴隷制について謝罪決議

アメリカのいくつかの州議会で、過去の奴隷制に関する「遺憾」表明決議を行なったことを昨年とりあげたが、今回は米下院で謝罪決議が通った、というニュース。

TOKYO Web 2008年7月30日(共同が配信したニュース)
米下院、奴隷制謝罪を初決議 黒人差別も
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 下院の決議は、南部テネシー州選出で白人のコーエン議員(民主)らが共同で提出。アフリカから強制的に黒人を連行して奴隷にしたことを「彼らの名前や運命を奪った、残虐で恥ずべき非人間的行為」と批判。米国の黒人は奴隷制やその後の人種隔離政策によって今日も苦しみが続いていると指摘した。その上で「米国民を代表して奴隷にされた黒人とその子孫に謝罪する」とした。

この決議を報じるニュース中の「強制的に・・・連行」という表現について Stiffmuscle さんが「「強制連行」に呪縛される日本のマスコミ」というエントリを書いておられる(決議案の原文も紹介されている)。" forced into ..." という表現を直ちに「強制連行」に短絡させてしまうことが認識の歪みをもたらす、というのは Stiffmuscle さんが指摘する通りだろう。そのうえでなお逆の見方も可能であるように思われる。ヨーロッパ人が直接「奴隷狩り」を行なったのは数の上では少数ケースで、多くは「商行為」により海を渡っていったわけである。しかし売られてゆく「奴隷」の視点からすれば、その過程でどのような商契約が結ばれていたにせよ、アメリカ(ないしその他の地域)行きを拒否する自由が存在しなかったことに変わりはない。欧米人やアフリカ人のこうした行為について「強制連行」と表現することに違和感を持たないのであれば、慰安婦問題についてのみ「強制連行」に「狭義」と「広義」を区別する根拠もまたなくなるわけである。