公娼制は当時の日本では「当たり前」だったか?

法華狼さんの従軍「慰安婦」問題関連エントリのコメント欄に、残念な人権意識の方が登場していることはご存知の方も多いと思います。例によって「当時、公娼制は合法だった」云々という論法です。しかし早くも1893年群馬県公娼制を廃止*1したのを嚆矢として、1930年から41年の間に13県が廃止*2、他に14県が戦前*3に廃娼決議をしています。「公娼制それ自体が問題である」という認識が戦前の日本でもかなり広く共有されつつあった(少なくとも建前レベルでは)ことがわかります。神奈川県の決議では公娼制について「人身売買と自由拘束」による「事実上の奴隷制度」としており*4、米下院決議などが「慰安所」制度を性奴隷制度だとしたことが、当時の日本の価値観から大きく隔たるものではないことがわかります。
南京事件否定論についても言えることですが、旧軍および当時の日本政府を免罪しようとする人々が当時の日本人の道義的水準を不当に評価している、というわけです。

*1:県会の廃娼決議はそれよりさらに早く、1882年のことのようです。

*2:現在も事実上の売春が存在しているように、抜け道もありましたが。

*3:「戦前」は曖昧な概念なので、「GHQの指令による公娼制廃止以前に」とでもしておいた方がよかったですね。

*4:以上、『日本軍「慰安婦」制度とは何か』、吉見義明、岩波ブックレットNo.784、42-44ページ。