『諸君!』休刊の舞台裏
掲示板で monroさんからご教示いただいた件です。毎日新聞の連載「アメリカよ・新日本論」の第4部が先日始まったのですが、その中で『諸君!』の休刊にも触れています。
保守系月刊誌「諸君!」の休刊は2月26日、文芸春秋の臨時役員会で決まった。惜しむ声は出たが、満場一致だった。理由は広告収入の減少だが、元役員は「同誌の赤字をカバーできないほど社の体力がないわけではない」と打ち明ける。最大部数9万5000部を記録したのは2000年代前半、歴史問題で極端な反中・反韓・反北朝鮮論に傾いた時だが、役員会で当時を評価する声はなかった。
(http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090622ddm003030133000c.html 以下同じ)(魚拓)
部数減は大きな要因ではあったがやはり決定的な要因というわけでもなかった、ということのようです。
創刊20年でベルリンの壁が崩壊。左翼に代わる「新しい敵」を探す中で、90年代後半の歴史教科書論争から「東京裁判史観」批判が強まり、保守言論にブームが起きた。
東京裁判否定は、本当ならアメリカの否定につながるが、親米を自任する論者も含めて主張はエスカレート。しかし、米国との徹底対決を避ける埋め合わせのように、矛先は首相の靖国神社参拝問題や北朝鮮の拉致問題と絡んで、東アジア諸国への非難に向かう。
保守系誌「正論」(産経新聞社)に引きずられる形で、中国や朝鮮半島への侮べつ的な表現が増え、それが読者に受けたが、持ち味の「寛容さ」は薄まる。「日米戦争はルーズベルトの策略」という田母神俊雄・前空幕長の主張を巡り、秦郁彦氏ら実証史家が批判されるようになった。
なにしろ秦郁彦氏もいまや「進歩的文化人」らしいですからなぁ・・・。
第3の保守系誌「WiLL」の創刊(04年11月)もあって、読者が減り始めた。最後の2年間は、元の誌風に戻そうとしても、過激路線に嫌気が差した何人かの著者から執筆を断られたという。
論の幅より過激な結論を好む読者も多く、「諸君!」は行き場を失い、最後は実売4万部を切った。
「悪印象の染みついた『諸君!』をつぶして文春は良識を見せた」との評価もあるが、「良識」を発揮する言論の場は消えた。
まあ護るべき歴史もない『WiLL』と正面から競争しても勝ち目はないですよね。