今月の新刊

次々に積んどく本がたまるので困ったもんです。

林氏にはすでに『華僑虐殺 日本軍支配下マレー半島』(すずさわ書店)という著作があり、また先日ここでも紹介した『戦争犯罪の構造』でも第6章「シンガポール華僑虐殺」を担当している。シンガポールでの華僑粛正は犠牲者数の規模はともかく、戦争犯罪としての悪質さは南京攻略戦における敗残兵掃討を上回るということができると思われる。ほかにもいくつか文献を集めてはいるのだが、なかなかまとめて勉強する時間がとれなくて。本書をきっかけにしたいところ。

前者の執筆メンバーは奥田暁子、早川紀代、平井和子、出岡学、荒井英子、牧律、加納実紀代の各氏。後者は『諸君!』の7月号で秦郁彦、荒井信一両氏と鼎談していた「アジア女性基金」理事によるもの。『諸君!』の鼎談を含め、この2冊が扱っている問題についてはちと聞き捨てならないことを書いている人もいるので、ちょっと時間をかけてエントリを準備したいと思っている。

  • 中村常賢、『陣中日誌 日中戦線 昭和十三・十四年』、刀水書房

応召した一兵士の遺族(次女)の手によって出版されることになった陣中日誌。先日も書いたように、このようなかたちで残されていてまだ公にされていない日誌・日記の類いはそれなりにまだあるはずだ。別に日本軍の戦争犯罪を追求するためだけではなく、ほとんどの戦闘が国外で行なわれたために地上戦の経験を「国民の記憶」として継承してこなかった*1日本社会が“戦争を知る”ためにもこの種の資料が保存・公開されることを望みたい。
年譜やあとがきには著者の所属部隊が明記されていないのだが、日記の記述や年譜にある出身地から判断する限り、第101師団の歩兵第103聯隊に所属していたようである(第101師団は一時期第十軍に編入されて杭州攻略戦に参加、その後上海派遣軍に復帰して上海に駐留した)。第101師団長の日記が刊行されたばかりであるだけに、昭和12年分の陣中日誌がないのが惜しまれる。

「(5)」は本当は丸囲み数字だが文字化けの可能性があるので代用。全10巻のシリーズも折り返し地点に。次の第6巻は吉田裕による『アジア・太平洋戦争』の予定。

5月末の刊行だが、今日の朝日新聞の書評欄に書評が載っていたので気づいた。このところ古書店まわりがメインだったもので…。読了したら多分本館でエントリを書きます。

*1:その歪みが沖縄での集団自決をめぐる教科書検定というかたちで現われているわけである。