「唯一の被爆国」(追記あり)

週末から週明けにかけて、長崎にまつわるニュースがいくつか報じられています。

 英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教が24日、長崎市の爆心地公園を訪れ、原爆被害者に祈りを捧げた。大主教が爆心地を訪れるのは初めて。「世界から核兵器をなくす運動をすることは、人間の倫理と尊厳のために運動することと同じだ」と述べ、核兵器廃絶を訴えた。
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 爆心地公園には、信徒ら約100人が集まった。大主教は原爆落下中心碑に献花した後、「核兵器国際紛争の脅しとして使われる限り、その攻撃性はずっと続く。核兵器は無差別に人を殺し、環境を破壊し、長期に影響を及ぼすもので、核兵器を使用することは自らに跳ね返ってくる」と、核兵器の非人道性を強調した。

  • YOMIURI ONLINE 2009年9月26日 「兵役拒否で奉仕活動のドイツ人、長崎の平和資料館に4人目」

 ドイツで憲法が認める「兵役拒否」を選んだアレクサンダー・バイスさん(20)(ドルトムント市出身)が、長崎市西坂町NPO法人「岡まさはる記念長崎平和資料館」で奉仕活動を始めた。バイスさんは長崎市役所で記者会見し、「原爆のことや長崎の歴史について学びたい」と抱負を語った。
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 軍縮を担う若手専門家の育成を目指す「国連軍縮フェローシップ」に参加している26カ国27人の外交官が27日、長崎市平和公園長崎原爆資料館などを訪れ、核兵器がもたらす惨状を学んだ。


 一行は、広島や長崎、東京を回る24−30日の日程で来日。国連安保理で「核なき世界」決議が採択された直後の長崎訪問について、イェジ・ザレスキー団長(ポーランド)は「大変意義深い。2005年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は失敗に終わったが、来年の再検討会議に向けて国連が大きく動いている。核廃絶が実現できるか課題もあるが、世界の動きに注視したい」と話した。
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国連安保理首脳会合での核廃絶決議が実現した一方で北朝鮮やイランの核開発、またイスラエルにNPTへの加盟を求めるIAEAの決議にアメリカ、日本(!)などが反対(結果は可決)したことなど、楽観を許さない事情もあるわけですが、少なくとも冷笑主義と現実主義の取り違えを克服するための足場は確保できつつあると言ってよいのかもしれません。
ところで鳩山首相安保理の首脳会合で「唯一の被爆国としての道義的責任」を言明し核廃絶のイニシアティヴをとることを表明したわけですが、広島・長崎での被爆者の国籍は日本に限らないこと、核実験による被害は日本以外の国でも生じていること、(冷戦時代とは形を変えているとはいえ)核による脅迫は(潜在的には)すべての国に及んでいることなど、問題の普遍的な側面にも世界の目を向けさせるような語り方が、今後一層重要になってくるのではないでしょうか。
またIAEAでの決議は新政権発足直後のものなので新政権の外交方針を反映したものなのかどうか不明ですが、本気で核廃絶への動きを主導するというつもりがあるのなら、この点についての新政権の立場も明確にすべきでしょう。


追記あり:上で紹介したニュースに加えてこういう訪問も。

 米国のジョン・ルース駐日大使が4日、広島市を訪れ、広島平和記念資料館を見学した。


 同市の秋葉忠利市長からオバマ大統領の広島訪問を要請されたルース大使は、「大統領に次に会ったら、広島での体験を伝える」と語った。
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 ルース大使は資料館で、「広島は『核兵器のない世界』の実現に向けて協力することの大切さを強く感じさせてくれる」などと記帳。「展示にとても心を動かされた」と感想を語った。