『昔 父は日本人を殺した』(再放送)ほか

6月19日に放送されたNHKスペシャル『昔 父は日本人を殺した〜ピュリツァー賞作家が見た沖縄戦〜』が再放送されるようです。7月28日(27日深夜)木曜、午前1時10分〜2時00分。本放送時にご覧になった方も少なくないと思いますが。未見の方にはお勧めしたい番組です。

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ピュリツァー賞作家、デール・マハリッジは海兵隊員だった父が死ぬ直前、「自分は太平洋戦争末期、沖縄戦に加わり、多くの日本人を殺した」と告白を受ける。デールの父は、戦場から持ち帰った多くの遺品を遺族に返してほしいと言い残し、息を引き取った。父は生前、デールに一度も笑顔を見せず、絶えず何かに怯え続けていた。父をあれほど、苦しめたものは何だったのか、デールは父と同じ部隊の生き残りを探し、全米を訪ね歩いた。その結果、父の所属した部隊は沖縄戦で240人中31人を除いて、みな戦死したこと、生き残った人たちも多くがPTSDに苦しみ続けたことを知る。今年4月、デールは父の託した遺品を持って、初めて沖縄の地を踏んだ。それは、デールが全米で集めた貴重な証言や資料と、日本側の証言を付き合わせ、これまでベールに包まれてきた沖縄戦の実像を浮かび上がらせる旅でもあった。
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http://www.nhk.or.jp/special/onair/110619.html

また、いまさらながらですが、6月1日にテレビ朝日系列の「テレメンタリー2011」で放送された『ダブルプリズナー』も短いながら良い番組でした。

岡山県ハンセン病療養所で暮らす立花誠一郎さん(90)。太平洋戦争中、オーストラリアで日本人捕虜が集団で暴動したカウラ事件の体験者だ。
捕虜を恥とする旧日本軍の教えが無謀な自殺攻撃を招いた。多くの生存者が捕虜となった負い目を感じながら戦後を生きるなか、ハンセン病というもう一つの苦しみを背負って人生を送ってきた立花さん。
その思いを受け止めたのは高校生だった。
http://asahi-newstar.com/web/15_telementary/?p=673

立花さんは捕虜収容所でハンセン病と診断され他の捕虜とは隔離されていたので暴動に加わっておらず、そのため生きて帰国できたわけですが、逆に言えば2度までも“生き延びてしまった”という思いを抱かねばならなかったのでしょう。戦後、日本政府が公式に「捕虜になるな、という方針は誤りであった」と認め、その方針が敵味方双方の死傷者を増やしたこと、日本軍が捕虜を虐待する(そして戦後多くの刑死者を出す)要因となったことなどを謝罪していれば、捕虜体験を持つ人びとの戦後の人生も少しは違ったものになったのではないでしょうか。
「その思いを受け止めたのは高校生だった」というのは岡山県のある高校の放送部が立花さんを取材していたことを指します。番組の最後で、放送部のOGが、カウラ事件を起こした日本軍将兵のメンタリティについて、自分たちにも無縁のものではないという趣旨の感想を述べていたのが印象に残ります。