そのうち「広義/狭義の命令」なんて言い出す奴が出てきたりして……

 国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、平川南館長)が常設展示している沖縄戦の「集団自決」について、説明文から旧日本軍の指示・命令の記述が削除された問題で、同館は5日から説明文を改め、「集団自決」の背景に手りゅう弾の配布といった「軍人の指示」を明記した。ただ、「命令」といった軍の強制には触れず、これまでの説明にあった「集団自決に追い込まれた人びともいた」との表現もなくなった。

これが産経にかかると「「関与」よりも一歩進んだ「指示」という表現で決着したことに識者からは批判が出そうだ」などとなってしまうわけですが。
前々から書いてきたように、(集団)自決に関する限り厳密な意味での「軍による命令」、法的根拠に基づき公式な指揮命令系統を通じて下される「命令」というのははじめから意味をなさないはずです。戦陣訓ですら「捕虜になるな」とは書いてあっても「捕虜になるくらいなら自決せよ」とは書かれておらず、不文律が自決を強要したわけです。そうすると「指示」は確認できたが「命令」は資料によっては裏付けられなかった、という博物館側が「指示」と「命令」をどう区別しているのか問題になります。


追記:念のため補足しておきますが、多くの概念について「広義の○○」と「狭義の○○」とを区別することは可能ですし、場合によっては有益足り得ます。エントリ中では「厳密な意味での(命令)」という用語を用いましたが、これを「狭義の(命令)」と言い換えること自体は可能です。問題なのは、従軍「慰安婦」について「広義の/狭義の強制」という区別が「強制」という用語を回避するために用いられたことであり、同じような意図で「狭義の命令」という用語法が用いられること、であるわけです。